高コレステロール血症はどう治療すべきか?米国での考え方

コレステロールは本当に薬で下げるべき?イェール大学教授の提言
JAMAに掲載された”Treatment of Cholesterol in 2017″の翻訳記事です(元記事をみる)。以下は、翻訳記事の抜粋です。日本の実情も反映されています。


コレステロールは動脈硬化との関係が知られています。動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患と総称される病気の主要な原因のひとつです。

その一方でコレステロールは、一部のホルモンの原料となるなど、体にとって必要な役割もあります。また、コレステロールを減らす薬剤を使うことで副作用が現れる場合もあります。

高コレステロール血症は病気につながる恐れがあります。治療として、コレステロールを減らすことのできる薬剤があります。ここでは主に以下の3種類の薬剤が話題にされています。

スタチン
同じ作用機序を持つ薬の総称です。アトルバスタチン(商品名リピトール®)などがスタチンに分類されます。3種類のうち最も早くから使用され、多くの研究の蓄積があります。

エゼチミブ
日本では商品名ゼチーア®として使用されています。

エボロクマブ
注射する薬です。3種類のうちでは最も新しく、アメリカでは2015年に承認され、日本では商品名レパーサ®として使用されています。日本での使用は、心血管疾患のリスクが高い人に限って、スタチンで効果が不十分な場合にスタチンと同時に使うことと決められています。

スタチンは心血管疾患の症状を経験した人の再発予防などに有効であることが示されています。エゼチミブとエボロクマブはコレステロール値を下げる効果がはっきりしていますが、その結果として心血管疾患をどの程度予防できるかについては慎重な意見もあります。

コレステロール値を下げると病気が減る?

一般に、コレステロール値を下げることと病気を予防することは同じではないとわかってきています。薬剤でコレステロール値が下がったとしても、それが病気の予防になるかを知るには別の証拠が必要と考えられています。

エゼチミブについてはIMPROVE-IT試験、エボロクマブについてはFOURIER試験という研究で、それぞれ何らかの病気の予防効果が得られたことが報告されています。しかし、2016年にアメリカの食品医薬品局(FDA)は、エゼチミブの用途(適応症)を心筋梗塞・脳卒中の予防まで拡大するにはIMPROVE-IT試験の結果では不十分という見解を示しています。

薬はいつ使うのか?

スタチン・エゼチミブ・エボロクマブの中ではスタチンが最も安価です。エボロクマブは最も高価です。日本に当てはめると、アトルバスタチン20mgを1日に使用すると薬価は87円となります(ジェネリックの薬価)。エゼチミブ(ゼチーア)を1日に10mg使用すると185.3円です。エボロクマブ(レパーサ)は2週間に1回の注射140mgあたり22,948円です。

クルムホルツ氏は、以下のようにコレステロール値を下げる薬剤治療を提案しています。

  1. 動脈硬化による病気のリスクを評価する
  2. 禁煙・食事・運動・適正体重維持など健康的な生活習慣を勧める
  3. 脂質を減らす薬剤の利益とリスク、コストを相談する
  4. 薬剤は高リスクの人には高用量、低リスクの人には低用量で始め、患者がよりリスクを減らしたいと希望すれば増量を考える
  5. 症状をすでに経験していて、さらにリスクを減らしたいと希望する患者には証拠のあるスタチン以外の治療を考える。エゼチミブよりあとにエボロクマブも考えられる
  6. スタチン耐性が軽度または中等度に現れた場合は、スタチン以外の証拠のある治療の前にほかのスタチンを考える
  7. 病気を減らした証拠がない薬剤は、特に安全性の懸念がある薬剤は使用を避ける
  8. アドヒアランス(処方した用法・用量を守って薬を飲んでいること)を計るために脂質の検査をしてもよい
  9. 患者の考え、薬剤治療の方針、薬剤耐性について常に再評価する

検査値が「異常」だから「正常」にしよう…と考えるのは、おかしいことではありません。しかし、数値が絶対ではありません。その数値が何を意味するかは注意して解釈する必要があります。いま服薬や検査を続けている人については、主治医がその必要があると考えた結果であり、主観によって変えるべきとは言えません。自己判断で薬をやめたり、紹介なしに病院を変えたりするのは危険です。自分が望む医療を手に入れるには、主治医との間で人間として話し合える関係を作ることが第一歩です。


この記事には出てきませんが、高用量のスタチンを使用する人は腎障害を発症するリスクが高いことが報告されています(記事をみる)。ですので、スタチンの投与を行う場合、アトルバスタチン(リピロール®)、ロスバスタチン(クレストール®)、シンバスタチン(リポバス®)などのストロングスタチンで治療をスタートするのではなく、作用が比較的弱く、スタチンの中でも最も早くから使用され、多くの研究蓄積があるプラバスタチン(メバロチン®)からスタートするのが無難だと思います。

エゼチミブ(ezetimibe、ゼチーア®)とエボロクマブ(evolocumab、レパーサ®)については、以下の関連記事をご覧ください。

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