iPS創薬がついに実現へ?

iPS創薬がついに実現へ。京大病院が世界初の治験を近く実施
以下は、記事の抜粋です。


ついに、iPS細胞を使って薬が作られるように。

将来、実用化が期待されているiPS細胞。なんと、このiPS細胞を使った治験を、京都大学医学部附属病院が世界で初めて行ないます。細胞治療の臨床研究はこれまでも行なわれていましたが、創薬に関しての治験はこれが初になります。

対象となる病気は、進行性骨化性線維異形成症という希少難病(FOP)。200万人に1人という、とても少ない割合で発生する病気で、国内の患者数はわずか80人程度。本来ないはずの場所に骨と同じ組織ができ、それが手足に広がって、運動機能障害を起こしてしまう病気です。

この病気に対して、京都大学の戸口田 iPS細胞研究所教授らのグループが、共同研究を実施。FOPの患者さんからiPS細胞をつくり、病気を再現して研究を重ねた結果、シロリムス(別名ラパマイシン)というすでに他の疾患でも使われている薬が効くことを確認しました。

この治験は、近く開始される予定とのこと。iPS細胞の創薬への応用が広まっていけば、これまで治すことのできなかった病気を治療できるようになるかもしれません。


以前の記事で、山中教授が講演で「iPS細胞のより効果的な使い方は薬の開発だ」と話し、「対象とする病気の数の多さなどから考えて、iPS細胞の効果的な使い方は(細胞を患者へ移植する再生医療ではなく)薬の開発だと思う」との認識を示したことや、2015年の春から京大と武田薬品が心臓病や糖尿病向けの創薬にiPS細胞を活用する大規模な共同研究を始めたことを報道する日経の記事を紹介しました。

上の日経の記事では、安倍政権が医薬品産業を成長戦略に期待される産業として位置づけ、「製薬産業をもっと国際的な競争力のある産業に育成していくことが重要」などとして、「創薬」を推奨していることも、iPS細胞による創薬開発が有望である理由として書かれています。

しかし以前にも書いたように、先進諸国ではヒトの平均寿命が生物学的限界に近づきつつあり、「新薬の登場よりも、特許切れのペースが速い」状況の中で、「新薬を次々と研究開発して儲ける」という製薬会社のビジネスモデルは過去のものになりつつあります。政府の推奨する「創薬」は、もはや医薬品産業の成長戦略になり得ません。海外の製薬大手の多くは、ジェネリック市場に参入すると同時に、研究はベンチャーに、臨床開発はCROにアウトソースし、マーケティングと監督官庁との交渉に特化した「商社」的なものに変化してきました。

これらの状況を受けて、以前の記事では、iPS細胞を使って「心臓病や糖尿病向けの新薬」を創薬しようとしても、「日本の成長戦略」を担うようなブロックバスター(巨額の売り上げの医薬品)は生まれないことを説明し、「iPS細胞、創薬に活用を」という記事のタイトルに疑問符を付けました(記事をみる)。

今回紹介した記事は、私の予想に反して「iPS細胞、創薬に活用を」が実現したように書かれています。しかし、200万人に1人発生し、国内の患者数はわずか80人程度の病気に既存の薬物が効果があることが分かっても、「iPS創薬がついに実現」とは言えないと思い、また疑問符をつけました。もっとも、製薬企業が興味を持たないような希少疾患をターゲットにして、既存薬物の効果を調べるためにiPS細胞を使うというアイディアはとても素晴らしいと思います。

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