血液1滴、がん13種早期発見…3年めど事業化??

血液1滴、がん13種早期発見…3年めど事業化
以下は、記事の抜粋です。


国立がん研究センター(東京都)などは、血液1滴で乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、来月から臨床研究を始める。早ければ3年以内に国に事業化の申請を行う。

一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、がんによる死亡を減らせる可能性がある。

検査法では、細胞から血液中に分泌される、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA」を活用する。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種類が異なり、一定期間分解されない。

同センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人の保存血液から、乳房や肺、胃、大腸、食道、肝臓、膵臓すいぞうなど13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定した。血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1期」を含め、すべてのがんで95%以上の確率で診断できた。乳がんは97%だった。


この記事で書かれている国立がん研究センターと東レなどとの共同研究は、3年前にも報道され、本ブログでは「こんな研究に5年間で79億円の予算??」という書きました(記事をみる)。予算にみあった成果は得られたのでしょうか?読売はいかにも有望であるかのように報道しています。私はhopelessだと思います。以下は、3年前に書いた批判ですが、今もそのまま有効だと思います。


がんのマーカーの探索は、最も競争が激しい研究分野の1つです。また、最近の研究によって、がんの薬物治療は、個々の患者さんのがん組織における遺伝子変異様態を把握して、その変異に対応した分子標的薬を投与するコンパニオン診断薬・個別化医療の方向へ向かっています。また、このグループが最初に検査法を開発するとしている乳がんの遺伝子異常は、4種類に分類されることがわかっています(記事をみる)。「13種のがん」という発想は過去のものです。

一方、がん組織における遺伝子変異を、血中に浮遊するがん細胞由来のDNAから診断する技術も発達しています。遺伝子変異がわかれば、その変異に対応した分子標的薬治療を行うことができます。マイクロRNAに基づく診断は、治療に直結するのでしょうか?

マイクロRNAの発見も血中のマイクロRNAがマーカーになるのではという発想も日本オリジナルなものではないのに、また上で説明したようにあまり有望でもないのに、どうして5年で79億円もの血税が投入されるのでしょうか?読売もNHKも当事者の発表を鵜呑みにした報道しかしていません。「ミレニアム・ゲノム」とか「タンパク3000」とかのほとんど成果を出せなかった大型プロジェクトを思い出します。


具体的な成果についての報告はなく、書かれている成果は、「すべてのがんで95%以上の確率で診断できた。乳がんは97%だった。」だけです。これは、100人のがん患者の中、95人で陽性だった。100人の乳がん患者の中、97人で陽性だった。というだけです。がんのない人で陽性に出る偽陽性がどの程度かは書かれていません。要するに、感度と精度が他の検査と比べてどの程度優れているのか、まったく書かれていません。

また、この検査で陽性になった場合、全身を調べてがんを探し回ることになります。このようながん検査が過剰検査と過剰治療になってしまう可能性があります。

以前も書きましたが、血液5mlも1滴も患者さんの負担はそれほど変わりません。また、血液が1滴しかない場合、微量な物質の高感度測定は様々な因子の影響を受けやすいため、むしろ取り扱いが難しくなり、結果も不安定です。血糖値などを迅速に知りたい時には血液一滴からの測定は役にたちますが、少なくともがんを血液一滴から測定する臨床的意義はないと思います。

最近は不景気のせいで企業からのサポートが減少したため、人間ドック受診者数は頭打ち気味だそうです。

以上のような理由で事業化が成功するとは思えませんが、無理矢理成功させれば過剰検査と過剰治療で国民の身体と財布を苦しめることになると思います。

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