日本政府は地震予知ができないことを認めるべきだ――Robert J. Geller

「日本は地震予知できぬと認めよ」 学者が科学誌に論考
以下は、記事の抜粋です。


日本政府は地震予知ができないことを認めるべきだ――。こう題した論考が英科学誌ネイチャーに5月18日、掲載された。東日本大震災から6年を経ても、科学的根拠が乏しい地震予知や長期予測に頼っているとして、防災政策を改めるよう促している。

筆者は米国生まれで、今年3月で東京大教授を退職した地震学者のロバート・ゲラーさん。1984年に来日して以来、日本の地震研究が地震の予知に偏っていることに疑問を抱いてきた。

論考では、東海地震に備えた大規模地震対策特別措置法(大震法、1978年施行)が、地震の前兆現象の観測を前提にしていることや、南海トラフ地震などの大地震が周期的に起こるという考えに基づき、発生する確率を算出していることについて、いずれも「科学的根拠はない」と指摘している。

一方で、東日本大震災を起こした地震は「想定外」だとして、現在も予知や予測に基づいた政策を続けていることは不適切だと批判した。

ゲラーさんは「政府は国民に正確な直前予知ができないことを伝え、堅実な科学研究に基づいた地震対策をすべきだ。ネイチャー誌も、東日本大震災後に改善の兆しが見られない日本の地震学の状況を憂慮して論評の場を提供してくれたのではないか」と話している。


元記事(correspondence)のタイトルは、”Seismology: Japan must admit it can’t predict quakes”です(記事をみる)。また、国際津波防災学会のニュースでも以下のように紹介されています。


発表のポイント

筆者は、2011年、政府の地震対策の抜本的見直しの必要性に関する小論文をネイチャー紙で公表した(公式和訳: 日本の地震学、改革の時)が、その後の6年間においても見直しの兆しすら見えない。今回、筆者は、改めて抜本的見直しの必要性を論じる。

発表の概要

マグニチュード(M)9.1東日本大震災からすでに6年の年月が経過したが、日本政府はいまだ適切な地震対策を行っていない。筆者は、間違った古い政策を破棄し、その代わりに堅実な研究結果に基づいて地震対策をとることこそ政府の急務であると論じる。

筆者は、2011年政府の地震対策に関する小論文をネイチャー紙で公表した(公式和訳: 日本の地震学、改革の時)。その論文で、地震は周期的に起きるという仮説(周期説)に科学的根拠はなく、また科学的に認められた前兆現象もない。したがって、これらに基づく長期的地震予測、短期的地震予知のいずれも現時点では不可能である。当然、これらの予測、予知に基づく地震対策も誤りであることを明らかにした。にもかかわらず、政府はいまだに、今後の30年間でM9級の巨大地震が南海トラフで発生する確率は極めて高い、とする。言うまでもなく、その予測見解は、既に科学的に否定された周期説(Y. Y. Kagan et al. Seismol. Res. Lett. 83, 951–953; 2012)に基づくものである。「想定外」とされた東日本大震災後においても、国際的な科学コミュニティにおいて否定された周期説を政策の根拠とすることは“認知的不協和”と言わざるを得ない。

筆者の2011年の小論文では、1978に施行された大規模地震対策特別措置法(大震法)を廃止すべきであることも論じた。大震法の前提は、想定されたM8級「東海地震」の前兆現象が観測でき、しかも前兆であると前もって識別できること、そしてその前兆現象に基づいて地震が3日以内に発生することがわかること(これにより警戒宣言を発することが可能となる)である。しかし、いずれの前提も科学的根拠は皆無である。にもかかわらず、現在でも大震法は有効であり、報道によれば、政府は撤廃ではなく、むしろ法律の対象をより広い領域に拡大し、警戒宣言よりも弱い注意報の発表を可能にするよう法改正する方針であるという (‘Don’t rely on quake predictions’, The Japan Times 7 July 2016を参照)。

政府は、今こそ、国民に対し、現時点で正確な直前予知ができないことを伝え、大震法を廃止し、堅実な科学研究の知見に基づいた地震対策をとるべきである。


関連記事に紹介したように、ロバート・ゲラー氏は、政府が大地震が予測できるとして行っている政策にはまったく科学的根拠がないことや補助金による政府と研究者の癒着を指摘する論文を2011年にNature誌に発表しています(記事をみる)。それ以来、政府の地震対策や学会の姿勢が何も変わらなかったというのが、既得権益にまみれた日本社会のすごいところだと思います。彼の意見はまた完全に無視されるのでしょうか?

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