日立が線虫でがん検査? 無駄な検査が増えるだけでは?

線虫でがん検査、19年末にも=尿1滴で判定、実用化へ-九大ベンチャーと日立
以下は、記事の抜粋です。批判記事なので、ほとんどそのまま転載しています。


体長約1ミリの線虫が、がん患者の尿に誘引される性質を利用したがん検査の実用化に向け、九州大発のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」と日立製作所は4月18日、共同研究を行うと発表した。日立が自動解析装置を開発し、2019年末から20年初めに保険が適用されない自由診療での実用化を目指す。

線虫の性質を発見した九州大助教で、同ベンチャー社長の広津崇亮さんは都内で記者会見し、「胃や大腸、膵臓など消化器がんの臨床研究では(がんを判定できる)感度が90%。早期のがんも簡便で高精度に安く検査できる」と説明。費用は1回数千円を想定しているという。

線虫は大腸菌などを餌とし、飼育が容易。02年のノーベル医学生理学賞は線虫を使った遺伝学研究に授与された。

広津さんによると、容器に尿1滴を垂らし、約30分で線虫50~100匹の過半数が尿に寄っていけば、がんと判定する。線虫は犬以上の嗅覚があり、がん患者の尿に特有な物質のにおいが餌に似ているため、誘引されると考えられる。

日立は尿に寄って行く線虫を数える方法ではなく、多数が集まると明るく見えることを利用した自動解析装置の開発を進めている。


この検査の理論的な裏付けになっている論文はPLOS ONEに掲載された以下の論文です。
A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection

論文によると、がん患者の尿に含まれる物質は不明ですが、その物質はGTP結合タンパク質と共役した受容体を介して線虫に検知されるそうです。ただし、このような受容体は1500以上の種類があり、どの受容体を介してどのようなメカニズムで検知されるかは不明です。ということで、このような診断法に医薬品医療機器総合機構(PMDA)が保険の適用を承認するとは思えません。記事に書かれているように、自由診療しかないでしょう。

問題は、広津さんも言っている「簡便に安く検査できる」ことです。「日立がやっているし安い」といって、がんに不安を持っているひとがドンドンこの検査を受けることを期待しているのでしょうか?現在の日本では、2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで死んでいるのでがんが不安なヒトは多いと思います。

感度(精度?)が9割というのも決して高い数字ではなく、10人に1人が無駄な検査を受けることになります。さらに、この検査ではがんの部位や種類はわからないので、「陽性」だったヒトはがんを探し求めて、CTやMRIなどのさらに詳しい検査をすることになります。また、生命予後に影響しない様ながんも治療する可能性も高くなります。

関連記事にも書きましたが、メカニズムがはっきりしているPSA(前立腺特異抗原)検査による前立腺がんスクリーニングも過剰検査・過剰治療の原因になるとして推奨されていません。同様に、無駄な検査を増やすだけの「線虫によるがん検査」が推奨されるとはとても思えません。シャープが倒れ、東芝が倒れかけていますが、この調子では日立も危ないのではと心配です。

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