下痢を起こす大腸菌の毒素を発展させた便秘型過敏性腸症候群(IBS)治療薬リナクロチド(linaclotide、リンゼス®)が発売

新しい便秘型過敏性腸症候群(IBS)治療薬リナクロチド(linaclotide、リンゼス®)が発売されました(記事をみる)。リナクロチドは14個のアミノ酸からなるペプチドで、関連記事に書いたように、腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E. coli, ETEC)の耐熱性毒素(heat stable toxin, ST)の活性部分のペプチドとほぼ同じものです(記事をみる)。

ETEC は途上国における乳幼児下痢症の最も重要な原因菌であり、先進国においてはこれらの国々への旅行者にみられる、旅行者下痢症の主要な原因菌です。私も一度フィリピンで感染したことがあります。途上国においては、ETEC下痢症はしばしば致死的で、幼若年齢層の死亡の重要な原因です。

正常の腸上皮では、guanylinやuroguanylinとよばれるペプチドが、腸管内Na濃度の上昇によって産生・分泌されます。分泌されたペプチドはGC-Cを活性化し、腸上皮細胞内で産生されたcGMPは、Na+/H+ 交換を抑制し、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)を活性化します。その結果、小腸では、水、塩素、重炭酸塩が腸管へ分泌されます。また、大腸ではNaや水分の吸収が抑制されます。

STは、GC-Cを強く活性化することで、上記のメカニズムを亢進させ、下痢をひきおこします。リナクロチドも同じメカニズムだと思われますが、1つアミノ酸がSTとは違うので、激しい下痢ではなく適度な便秘治療効果が得られるのかもしりません。

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