難病遺伝子あるのに健康な人を発見、治療へのヒントに

難病遺伝子あるのに健康な人を発見、約60万人から13人 研究
以下は、記事の抜粋です。


深刻な病気や死の宣告をもたらしていたはずの遺伝子変異がある人が、ごく少人数ながら健康な人の中にも存在することを発見したとの研究結果が4月11日に発表された。

単一遺伝子の特異的変異に関連する「嚢胞性線維症」や他の数十に及ぶ希少難治性疾患の治療法開発に向けた新たな道を開くものだ。これらの変異が一つでもあると病気の発症は避けられないというのがこれまでの医学の定説だった。

今回の研究を主導したIcahn School of Medicine at Mount SinaiのEric Schadt教授は、研究者30人からなるチームを率いて、約60万人のゲノム(全遺伝情報)から得られた900個近い遺伝子に関するデータのふるい分けを実施し、数百種類の異なる遺伝病のどれかの原因となる明確な変異を探した。

厳密な選別を行った結果、通常であれば8種類の消耗性疾患のうちどれか1つを引き起こす遺伝子変異がある人が13人見つかった。

これら8種の疾患には、肺や消化器系に重度の損傷を及ぼす嚢胞性線維症の他、頭蓋骨の重度の変形を特徴とする「ファイファー症候群」や、多発奇形や知的障害に関連する疾患の「スミス・レムリ・オピッツ(SLO)症候群」などが含まれていた。


元論文のタイトルは、”Analysis of 589,306 genomes identifies individuals resilient to severe Mendelian childhood diseases”です(論文をみる)。

ゲノムを全部読んだわけではないとは思いますが、もう約60万人のゲノム情報が集積されているとは驚きです。また、13人の中で嚢胞性線維症(cystic fibrosis)とAtelosteogenesisは3人、SLO症候群は2人が病気をおこすはずの変異を克服しているのは、これらの病気の治療への希望を持たせてくれます。

酵母でも温度や薬物に感受性になる変異がある場合に、更にもう一つ変異が入ることで感受性がなくなる変異のことを”suppressor mutation”とよび、元の変異遺伝子と機能的に関連がある遺伝子の変異であることが多いです。

同様に、嚢胞性線維症の場合、変異があるのに健康なヒトには、変異のあるイオン輸送体と拮抗する未知の分子をコードする遺伝子に変異が生じているのかもしれません。この拮抗する分子を同定できれば、この分子の機能を阻害する薬物は嚢胞性線維症の治療薬になる可能性があります。研究の進展を期待しています。