医学の力で「運動したことになる薬」が開発中?

医学の力で「運動したことになる薬」が開発中
以下は、記事の抜粋です。


運動することによって筋肉内で起きる1,000回近くの分子変化を、シドニー大学などの研究チームが特定した。「実際に運動しなくても運動による利益を得られる薬」の開発に役立つという。

『Cell Metabolism』誌に発表された研究によれば、人間が運動すると、筋肉内で1,000回近くの分子変化が起きることが明らかになった。運動に対する分子の反応の詳細を示したこの青写真を利用することで、最も重要な変化を選び出し、そうした変化を薬の力で模倣する試みに、そう遠くなく着手できる可能性がある。つまり、実際に汗をかかなくても、運動による利点を手に入れられるようになるかもしれない。

収集されたすべてのデータは、トレーニングを受けていない、健康な男性が10分間運動した後の骨格筋の生体組織を分析し、質量分析法と呼ばれる手法でタンパク質のリン酸化を調べたものだ。

「運動によって人間の筋肉に複雑な一連の変化が起きることは長い間推測されてきましたが、厳密に何が起きるのかを特定できたのは今回が初めてです」と、論文執筆者のひとりであるノーラン・ホフマン博士は説明している。「これは大きな進歩です。なぜなら、この情報を使うことによって、運動によって起きる、本当に有益な変化を模倣する薬を設計できるからです」


元論文のタイトルは、”Global Phosphoproteomic Analysis of Human Skeletal Muscle Reveals a Network of Exercise-Regulated Kinases and AMPK Substrates”です(論文をみる)。

論文に報告されているのは、下の図にあるように、ヒトの筋肉組織をバイオプシーで採取して分析するという実験です。細胞中のATPが減ったら活性化されるAMPKというリン酸化酵素の基質を全部調べるという非常に基礎的な実験で、薬のスクリーニングなどは行っていません。AKAP1というミトコンドリア機能に関連するタンパク質が、AMPK依存的にリン酸化されるのを初めて明らかにしたと書いています。

運動したらどういう変化が筋肉細胞内でおこるかということを分子レベルで調べた実験ですが、ここから「運動したことになる薬」までの道は遠いと思います。