出生前頭蓋内出血は統合失調症のリスクファクターの1つで、LPAがその主役かもしれない

統合失調症は生まれる前の頭の中の出血と関連、日本を含めた研究グループが新発見
非常に誤解を招きやすい記事です。全文を引用して記事と論文の異なる部分を後で説明します。


妄想や幻聴などの症状が出てくる統合失調症。その行動、脳の変化、広範囲の遺伝子の活性化を引き起こす脳内の分子を同定した。米国のスクリプス研究所と日本の製薬企業である田辺三菱製薬の研究グループが、トランスレーショナル・サイカイアトリー誌2015年4月号で報告した。

遺伝的要因だけではない
世界保健機関(WHO)によると、世界では2100万人以上が統合失調症にかかっている。統合失調症などの精神障害は、遺伝的要因のほかに、胎児期の出血、母体の低酸素や低栄養などとも関連が深いと分かっている。

研究グループは、胎児のときの頭の中で起こる出血について関連性を研究した。注目したのは「リゾホスファチジン酸(LPA)」と呼ばれる脂質だ。頭の中で出血すると作られるもの。これまでの研究では、リゾホスファチジン酸の影響が広がると、胎児の脳の構造が変化したり、頭の中で水がたまる水頭症が発症したりすると分かっている。結果として、精神障害のリスクが高まる。

脂質と統合失調症に関連か
研究グループは、ネズミの動物実験で、リゾホスファチジン酸が増えると統合失調症の症状が起こってくるかを検討した。

出生後10週目のネズミでは、リゾホスファチジン酸の投与によって刺激に対して活動が高まり、不安症状を示すと確認した。脳内麻薬と呼ばれるドーパミンを作る神経細胞が増えて、統合失調症やその他の精神障害の特徴にもつながると見られた。

音に対する反応でも、統合失調症と似た症状を示した。脳内の変化についても、神経伝達を担う物質を作る細胞に、統合失調症と同じような変化が見られた。
今回の研究では、メスを対象としたが、今後は、オスに関する研究も進める必要があるという。生まれる前の問題が関係するという証拠が固まりつつある。統合失調症への対策につながりそうだ。


元論文のタイトルは、”LPA signaling initiates schizophrenia-like brain and behavioral changes in a mouse model of prenatal brain hemorrhage”です(論文をみる)。

日本語の記事は、統合失調症の原因が「生まれる前の頭の中の出血」あるいは「胎児のときの頭の中で起こる出血」であるかのような誤解を与えます。

論文の主旨は全く違っていて、「生まれる前の頭の中の出血」が統合失調症のリスクファクターの1つであることのメカニズムをマウスを用いて調べたところ、血液中のLPA(Lysophosphatidic acid)とその受容体(LPA1)が重要だったという話です。