加齢黄斑変性が薬で治療できる可能性。 iPS細胞を用いた再生医療はどうなる?

抗HIV薬、加齢黄斑変性にも効果か 米研究
以下は、記事の抜粋です。


ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染による後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療に広く使われている抗レトロウイルス薬の一種「NRTI(核酸系逆転写酵素阻害剤)」が、目の難病である「加齢黄斑変性」の治療にも応用できる可能性があるとする研究が11月20日、Science誌に掲載された。

加齢黄斑変性は、網膜の中心部にある黄斑という組織に老化による異常が生じ、悪化すれば失明することもある。米ケンタッキー大学(University of Kentucky)のチームによると、マウスを使った研究で、黄斑変性の症状悪化につながるたんぱく質の複合体「インフラマソーム」の働きをNRTIが阻害することが確認できたという。


元論文のタイトルは、”Nucleoside reverse transcriptase inhibitors possess intrinsic anti-inflammatory activity”です(論文をみる)。

加齢黄斑変性という病気は、iPS細胞を用いた再生医療の第一ターゲットになっているのでご存知の方も多いかもしれません(理研のサイトをみる)。浸出型と萎縮型の2つのタイプがあり、両方あわせると、日本では50歳以上のヒトの約1%にみられるそうです。失明につながる網膜の病気ですが、現在のところ有効な治療法が少ないため、浸出型タイプの患者さんに iPS 細胞 から作製した網膜色素上皮シートを移植することにより、視機能を維持、改善しようとする再生医療が注目を集めています。

記事に書かれているように、この論文では既にHIV/AIDSの治療に使われている複数の核酸系逆転写酵素阻害剤(Nucleoside reverse transcriptase inhibitors (NRTIs))が、炎症を抑えることにより、浸出型だけでなく萎縮型にも効果がありそうだと報告しています。非常に面白いのは、この抗炎症作用はこれらの薬の逆転写酵素阻害活性とは関係のない”inflammasome”とよばれる自然免疫の仕組みの1つを抑制することによるとされているところです。

NRTIsはFDAが30年以上も前に認めた非常に安価で、安全性も確立した薬物です。NRTIsによる加齢黄斑変性治療は、iPS細胞を用いた治療にとっては強力なライバルかもしれませんが、患者さんにとっては大きな福音になる可能性があると思います。