オレキシン系に働く新規睡眠薬スボレキサント(ベルソムラ®)

リポート◎神経伝達物質オレキシンを阻害し覚醒を抑制―ナルコレプシーを逆手に取った新睡眠薬が登場―MSDのスボレキサント(ベルソムラ)、年内にも発売へ
以下は、記事の導入部分です。


覚醒の維持に関わる神経伝達物質オレキシンに着目した新機序の不眠症治療薬スボレキサント(商品名ベルソムラ)の製造販売が、9月26日に承認された。世界に先駆け日本で最初にMSDから発売される見込み。第3相試験の結果を中心に、その効果や処方上の注意点などを紹介する。


ラメルテオン(ロゼレム®)は、メラトニン受容体を刺激して自然な睡眠を誘導する、依存、乱用、離脱症状および反跳性不眠が生じにくいなど、良いことずくめの謳い文句で導入されましたが、肝心の睡眠導入効果が弱く、期待外れでした。

スボレキサントも睡眠導入効果の強さが大きな問題です。あとは、記事にも書かれているように、ラメルテオンと同様に抗不安作用がないので、ゾルピデムやベンゾジアゼピン系からの切り替えが難しいようです。だからといって、不眠を訴える患者さんに最初からこの新薬を投与するのは、以下に説明するように避けるべきです。

スボレキサント(ベルソムラ®)はオレキシン受容体拮抗薬です。オレキシンは覚醒を維持する神経伝達物質なので、オレキシン作動性ニューロンの機能が低下するとナルコレプシー(「居眠り病」ともよばれる)という病気を引き起こすことが知られています。同様の状態を薬物で作ることで睡眠を誘導しようとしています。問題は、ナルコレプシーには眠気以外の有害な症状があることです(説明をみる)。

そのためかはわかりませんが、アメリカのFDAは、傾眠の副作用、自殺念慮、自殺行動のリスクのため、30mg、40mgの申請は却下したそうです。また、CYP3A4阻害薬を服用している場合は5mgで開始することとし、5mg、10mg、15mg、20mgの4規格を承認しました。しかし、日本で承認されるのは、15mg、20mgの2規格だけのようです。明らかにアメリカの方が慎重です。

高齢になると自然に睡眠時間が短くなるので、病気でもないのに「不眠症」だと勝手に思い込む高齢者はけっこう多いような気がします。こんな人達に安易にゾルピデム(マイスリー®)などの睡眠薬を処方すると、最悪の場合は依存を形成してしまいます。ゾルピデムやベンゾジアゾピン系の薬物も最初は副作用が少ない安全な薬だと思われて市場に導入されました。これらの薬に依存という危険性があることを認識していない医師もまだまだ少なくありません。

アメリカで開発されたスボレキサントが、アメリカよりも早く日本の市場に登場することに違和感を感じます。新しい薬に飛びつくのではなく、高齢者がぐっすり眠れないのは自然なことで、服薬の必要がない場合が多いことを医師も患者さんも認識することが重要だと思います。

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