シロクマがヒグマから分かれたのは最近50万年以内―高脂肪食に適応して遺伝子が変異

シロクマが「肥満」でも健康な理由、国際研究
以下は、記事の抜粋です。


餌の大部分を「脂肪」が占めているシロクマ(ホッキョクグマ)──人間なら心臓病を患うところだが、彼らは違う。Cell誌で論文を発表した研究チームによると、シロクマが北極で生き延びることができているのは、脂肪の代謝および血液による移動をつかさどる遺伝子内で、短期間に起きた進化のおかげだという。

シロクマと近縁種のヒグマのゲノムを比較した研究によると、こうした進化はすべて、シロクマがヒグマから分岐した後、最近50万年以内に起きたという。

この進化が起きた時期は、温暖な間氷期と一致するという。この時期、ヒグマは温暖な気候に促され、従来よりさらに北へと進出した可能性がある。そして再び気候が寒冷化した際、取り残されたヒグマの群れは、雪深く寒冷な新環境に適応せざるを得ない状況に追い込まれたのかもしれない。

シロクマは脂身の多いアザラシを主食としており、子に与える乳には脂肪が3分の1近く含まれている。シロクマの全体重の約50%を占めるのは、脂肪分だ。健康な人間の体脂肪率は8~35%とされている。

研究チームは、シロクマ79頭から血液と組織のサンプルを採取。そしてヒグマ10頭から採取した同サンプルと比較した。

その結果、最も選択性の強い遺伝子の1つは「APOB」であることを研究チームは発見した。APOBはLDLとして知られる「悪玉」コレステロールと結合する主要タンパク質をコード化し、血液から細胞内に移動できるようにする遺伝子だ。


昨日紹介した西川伸一先生の記事には、「ひょっとすると動脈硬化がある方が寒い地方で狩りで生活をしていた人間には都合が良かったのかもしれない。シロクマは北極圏に適応する進化の過程で動脈硬化に関わる様々な遺伝子を変化させ、血液を寒さから守っている。」と書かれていました(記事をみる)。

それで、この記事と元の論文”Population Genomics Reveal Recent Speciation and Rapid Evolutionary Adaptation in Polar Bears”を読みました(論文をみる)。

機能的な実験は行っていないけれど、シロクマのAPOB遺伝子は、主食のアザラシの脂身のために非常に高くなってしまう血中LDLレベルに対応して変異していると、論文は推測しています。変異した結果、LDLを血中から除いて細胞に取り込む、つまり動脈硬化にならないようにしているだろうと。また、APOBの変異は寒さに対して生じたのではなく、動物性脂肪ばかりの食事に対して生じたという議論です。

いずれにしても、シロクマとヒグマが「たった」50万年前に分かれたとは驚きです。ヒトが石器を使い始めた方が先かもしれません。

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