現存の薬物で「善玉」コレステロール(HDL)を増やしても心血管リスクは減らない

Effect on cardiovascular risk of high density lipoprotein targeted drug treatments niacin, fibrates, and CETP inhibitors: meta-analysis of randomised controlled trials including 117 411 patients

この論文の解説「HDL-C値を高めても心血管イベントは減少せず――スタチン投与下でのナイアシン、フィブラート系薬、CETP阻害薬の評価結果」が日経メディカルにあります(記事をよむ)。

HDL-コレステロール(HDL-C)レベルと心血管疾患発症頻度が逆相関することから、HDLレベルを上昇させると心血管疾患リスクが軽減されるのではないかと思われてきたが、そうではないようだというメタ解析の論文です。

HDLレベルを上昇させる薬物としては、ナイアシン、フィブラート系薬、CETP(cholesteryl ester transfer protein、コレステロールエステル輸送タンパク質)阻害薬が知られています。著者らは、これまでの文献からこれらの薬物が心血管イベントに与える影響を調べたランダム化臨床試験を39件抽出して、メタ解析を行いました。

11万7411人の患者を対象とした解析の結果、これら3つの薬はHDLレベルを上昇させる効果は高いけれども、全死因死亡、冠疾患死亡、心筋梗塞、脳卒中のどのリスクも低くする効果はないことが示されました。みごとなネガティブデータです。

HDLは均一ではなく、新生HDL、原始HDL、成熟HDL、TGリッチHDLなどの異なる成分が含まれています。現在の測定法は、これらを区別せずにすべて合わせたものをHDLとして測定しています。新生および原始HDLの上昇はコレステロールの逆輸送を刺激するけれども、成熟HDLは刺激しません。本当の「善玉」は新生HDLと原始HDLだけなのでしょう。今回調べられた3種類の薬物は主に成熟HDLを増加させるので、このような一見矛盾する結果になるのかもしれません。新生HDLや原始HDLを増やす薬物はまだないようです。

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