「血液一滴で診断」に臨床的意義はあるのか?

「血液一滴で診断」近づく夢 田中耕一さん、実用化挑む
以下は、記事の抜粋です。


血液一滴で病気を診断したい――。2002年にノーベル化学賞を受けた田中耕一・島津製作所シニアフェローが、受賞時に掲げた目標をかなえつつある。授賞理由となったたんぱく質分析技術に磨きをかけて感度を1万倍に高め、血液からアルツハイマー病の原因物質を検出できるところまできた。4月から新たな態勢で実用化に挑む。

入社2年後の1985年、レーザーを使ってたんぱく質の重さを精密に量る技術を開発。バイオ研究に不可欠な質量分析装置に実用化され、ノーベル賞に輝いた。だが、「医療に役立ちたい」との初心を貫くには感度が足りなかった。

転機は09年に訪れた。国の大型研究プロジェクトに選ばれ、5年間で約40億円の研究費を得た。約60人で「常識にとらわれない発想を」と挑み、約1年で画期的な分析手法を開発。感度を最高1万倍に高めた。13年、血中にわずかしか含まれないアルツハイマー病の原因のたんぱく質アミロイドベータ(Aβ)を、1ミリリットルの血液から検出することに初めて成功。未知のAβ関連物質も8種類見つけた。


具体的な方法は一切書かれていないので良くわかりませんが、おそらく質量分析を改良して感度を上げることに成功したのでしょう。しかし、この記事に書かれていることを読んだだけでは、田中さんのされている研究がどう医療に役立つのかよくわかりません。

アミロイドベータ(Aβ)は、現在でも抗体を使った方法(ELISA)で簡単に血中レベルを測定することができます。8種類の未知のAβ関連物質をみつけたということですが、それらの病因的意義は興味深いものの、診断的価値は不明です。

脳でAβ関連物質が蓄積することがアルツハイマーの病因と深くかかわることは事実としても、その血中レベルを微量の血液から測定することの診断や予後判断における意義はどの程度あるのでしょうか?5年間で約40億円の研究費を投入する意義がわかりません。

よほど重症な患者さん以外は、5mlも1滴も患者さんの負担はそれほど変わりません。また、血液が1滴しかない場合、微量な物質の高感度測定は様々な因子の影響を受けやすいため、むしろ取り扱いが難しくなり、結果も不安定で使い物にならないと思います。血糖値などを迅速に知りたい時には血液一滴からの測定は役にたちますが、少なくともAβを血液一滴から測定する臨床的意義はないと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする