疾患治療を意識した動物実験には有意差が過剰に示されるバイアスが多い

脳疾患治療の動物実験にはバイアス多い、米研究
以下は、記事の抜粋です。


ヒトの脳疾患の新たな治療方法を検証するための動物実験にはバイアスが多く、動物では肯定的な結果が報告された実験が、ヒトの臨床試験で失敗する事例が多いとする論文が7月16日、PLoS Biologyに掲載された。

米スタンフォード大学のJohn Ioannidis氏らは、過去に独立して行われた複数の研究のデータを統合して再分析したメタアナリシス160件を検証。これらには多発性硬化症や脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷の治療方法を試した1411件の動物実験が含まれており、対象となった動物は4000匹以上に上った。

しかし、そのうち500匹以上の動物を使って統計的に有意な強い関連性を示したメタアナリシスは8件だった。また、ヒトでのランダム化比較試験で「説得力のある」データが導かれた研究は、2件だった。それ以外の研究には、研究計画のずさんさ、肯定的な結果が出た研究のみ発表する傾向などの問題がみられた。

研究チームは、動物研究を行う科学者がデータを分析する際、より好ましい結果をもたらしそうな方法を選んでいるためにバイアスが生じている可能性があると指摘。また、科学者らが権威ある科学誌に論文を発表したいと考え、そうした科学誌が肯定的な報告を好むことにも原因があるとした。

研究チームは対策として、研究計画と分析に関するガイドラインの厳格化や、動物研究を事前登録制にして、その結果が肯定的でも否定的でも発表されるようにすること、他の研究者による検証を可能にする生データを公開することなどを挙げた。


元論文のタイトルは、”Evaluation of Excess Significance Bias in Animal Studies of Neurological Diseases”です(論文をみる)。

この論文は、メタ解析のメタ解析のようです。メタ解析については、まだ勉強中で良くわかりませんが、各論文での有意差の出し方にバイアスがある(怪しい、いかがわしい)ということが客観的に評価できるようですので、非常に興味を持っています。

また記事のタイトルでは、脳疾患治療の動物実験だけにこのようなバイアスが多いような印象を受けますが、そうではなく、他の疾患での動物実験を検証していないだけですので、他の疾患でも同様の傾向はあると思われます。

権威のある科学誌が肯定的な報告を好むために、バイアスが生じるのであれば、インパクト・ファクターとバイアスの強さが相関するような気がします。

最後の結論にも賛成です。私は、権威のある科学誌は肯定的な結果と共に、記載的な(descriptive)論文よりもメカニズムを証明するような(mechanistic)論文を好むこともバイアスやねつ造の原因ではないかと考えています。否定的な結果を記載した論文と共に、新しい意外な結果や興味深い結果を記載しただけでメカニズムには触れない論文も発表できるようにすることも重要だと思います。PlosOneなどのオンラインジャーナルは、いくらでも論文を掲載できるのですから、インパクトファクターを気にせずに、このような方向性を強めて欲しいと思います。

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