過密な糖尿病市場に新登場したSGLT2阻害薬

SGLT2 inhibitors enter crowded diabetes space
以下は、6月10日付けでNature biotechnologyに掲載された記事の抜粋です。


FDAは3月29日、米国として最初のSGLT2 (sodium glucose co-transporter 2)阻害薬Invokana® (canagliflozin、Janssen社) を2型糖尿病治療薬として承認した。これはヨーロッパで昨年11月に発売されたBristol-Myers SquibbのForxiga® (dapagliflozin)に続く2つ目の市販SGLT2阻害薬である。

薬物標的分子のSGLT2は、腎臓の近位尿細管においてグルコースの再吸収を担っている。そのため、SGLT2を阻害すると尿中へのグルコースの排出が増加し、血中グルコースが低下する。その結果、体重減少、尿路性器系真菌感染の増加、脱水リスクの増加、高カリウム血症などの様々な現象がおこると予想される。さらに、これらの薬物はすい臓β細胞の機能を増加させる。これは、血糖が下がることでβ細胞の負担が減るためだと考えられている。

市場アナリストの1人は、これらの様々な「副作用」がそれぞれの医師にどう評価されるかで、SGLT2阻害薬の普及速度がきまるだろうという。中でも、体重に対する「良い作用」と尿路感染という「悪い作用」の2つが重要だと考えられている。彼は、今年のInvokana®の売上は7000万ドルで2018年のピーク時には8億ドルになると予想している。しかし、これは控えめな予想で、爆発的に売れる可能性も示唆している。

上記のように、非常に多くの種類の2型糖尿病薬が現存するにも関わらず、患者の多くが目標のHbA1c値に到達できないのは、まだまだ新しい薬物が必要だからだという関係者もいる。特に、SGLT2阻害薬は、インスリンの分泌機構に働かないために、β細胞機能が極めて低下したような重症の患者にも使える点や、血糖を下げないので食欲を刺激せずに体重を減少させる点などが注目されている。

一方、膀胱炎が頻発する糖尿病患者では尿路感染症を起こしやすいSGLT2阻害薬は使いにくいだろうとか、コレステロール、血圧、血清カリウムなど多くの検査値に影響が出る可能性が高いのでモニターが大変だとかいうネガティブな意見もある。さらに、Forxiga®の臨床試験で指摘された骨折や発がんの可能性も今後クリアーすべき問題として残っている。

また、SGLT2阻害薬自身の副作用と共に、ライバル薬とも言えるDPP-4阻害薬の副作用(例えば急性膵炎やすい臓の前がん状態などが現在調査中)についての新しい知見も今後の市場動向に影響するだろう。

今後も2型糖尿病治療薬市場には、各社から新しいSGLT2阻害薬や週1回投与のGLP-1受容体アゴニストやDPP-4阻害薬などが次々と登場することが予想されている。まだまだ2型糖尿病治療薬市場から眼が離せない。


SGLT2阻害薬は日本ではまだ発売されていません。Invokana® (canagliflozin、カナグリフロジン)は田辺三菱製薬によって5月24日付で承認申請されたそうです。これは、SGLT2阻害薬としては、イプラグリフロジン(ipragliflozin、アステラス製薬/寿製薬)、ルセオグリフロジン(luseogliflozin、大正製薬)に続く3番目の申請だそうです。

これらの他、国内で申請前のSGLT‐2阻害薬は、ダパグリフロジン(dapagliflozin、ブリストルマイヤーズ/アストラゼネカ)、トホグリフロジン(tofogliflozin、中外製薬/興和/サノフィ)、empagliflozin(NBI/イーライリリー)の3つで、いずれもフェーズ3段階だそうです。

FDAはInvokana®について、承認の条件として5件の市販後調査の実施を要請しています。これらには上の記事にも書かれていた、心血管予後に関する臨床試験、悪性新生物、膵炎、骨関連有害事象に関する試験などが含まれています。これらの中では悪性新生物(特に膀胱がんリスク)が最も注目されます。

記事にもありましたが、私はSGLT2阻害薬の「体重減少効果・ダイエット効果」がキーになるような気がします。

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