複数の心血管危険因子を持つ患者に対してn-3系多価不飽和脂肪酸はベネフィットがなかった

n–3 Fatty Acids in Patients with Multiple Cardiovascular Risk Factors
以下は、論文要約の抜粋です。


背景:心筋梗塞または心不全の既往がある患者では、n-3系多価不飽和脂肪酸が有益な効果をもたらすことが複数の試験で示されている。複数の心血管危険因子、あるいは動脈硬化性血管疾患を有するが、心筋梗塞の既往がない患者において、n-3系多価不飽和脂肪酸によるベネフィットの可能性を調べた。

方法:二重盲検プラセボ対照臨床試験において、イタリアの開業医の一般診療コホートにおいて、複数の心血管危険因子、あるいは動脈硬化性血管疾患を有するが、心筋梗塞は起こしていない男女を適格とした。患者をn-3系脂肪酸群(1g/日)とプラセボ群に無作為に割り付けた。最初は、死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の累積発生率を主要エンドポイントとした。1年の時点で、主要エンドポイントを、心血管系の原因による死亡、または心血管系の原因による入院までの期間に修正した。

結果:登録した12,513例のうち、6,244例をn-3系脂肪酸群、6,269例をプラセボ群に割り付けた。追跡期間5年で、主要エンドポイントは、解析対象の12,505例中1,478例(11.8%)に発生した。内訳はn-3系脂肪酸群6,239例中733例(11.7%)、プラセボ群6,266例中745例(11.9%)であった。


魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、n-3系の多価不飽和脂肪酸あるいは、オメガ(ω)3脂肪酸ともよばれています。

サプリのサイトをみるとDHAは、学習能力・記憶力の向上、視力低下の抑制、動脈硬化の予防、高脂血症の改善、血栓の抑制、高血圧の抑制、運動能力の向上、老人性痴呆症の改善・予防、抗アレルギー、抗炎症作用、アトピーの改善などの効果があるとされています。さらに、これらの根拠として、一見「科学的」なデータが列挙されています。しかし、これらの効果の大半はまだ「科学的」に確立されていません。

このようなサイトでの「科学的」データの紹介の仕方の特徴は、サプリに効果があったという報告だけが紹介されていることです。実際には今回紹介したような効果について否定的な論文も数多く報告されています。当然のことですが、このようにサプリ販売にとって都合の悪い論文はサプリのサイトでは紹介されません。

では、相反する報告が存在する場合、どちらを信じれば良いのでしょうか?1)学会発表しかされていないものは怪しい。2)査読が厳しい雑誌に掲載されている方が信頼性が高い。3)臨床研究の場合は、前向き(>後ろ向き)のもの、例数の多いもの、無作為化されているものなどが信頼性が高い。4)いろいろな報告が出尽くした後から出てきたネガティブデータは信頼できる。などなどが判断する根拠になります。

本論文は、これらの根拠から判断するとかなり信頼性が高いと考えられます。しかし、上記のように、サプリのサイトには未来永劫絶対に紹介されないでしょう。

また、薬物の場合は、有害作用が報告されると、比較的速やかに注意書きなどに反映されますが、サプリにはそのようなルールはありません。カルシウムサプリの箱に、「摂りすぎると心血管リスクが増加します」のような注意書きはみたことがありません。できればサプリを飲む前に、医学論文サイトなどで上記1)~4)を調べてください。ほとんどの場合、飲む気がなくなると思います。

最近、日本薬剤師会が一般用医薬品のインターネット販売全面解禁に反対して、「『お薬の安心』が、自己責任になっちゃうの?」という全面を使った意見広告を日経、朝日、毎日などに出しました。サプリは食品に分類されますが、生で牛のレバーを食べてO-157に感染するのと同様、食品も薬物も「安心」は自己責任です。

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コメント

  1. やす より:

    SECRET: 0
    PASS:
    ある医師兼作家の先生が、頭の機能に良いと書かれていたので、飲んでいました~