穿刺吸引細胞診では良性・悪性がはっきりしない良性甲状腺結節の遺伝子発現による術前診断

Preoperative Diagnosis of Benign Thyroid Nodules with Indeterminate Cytology

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:甲状腺結節の約15~30%は、穿刺吸引細胞診だけでは良性か悪性かが確定できない。このような結節を有する患者は、精査のために診断的外科手術に回されるが、その大半は良性である。診断的手術前のリスク評価を向上させるために、167個の遺伝子の発現を測定する新しい診断検査について臨床試験をおこなった。

方法:患者3,789例、甲状腺結節から採取された穿刺吸引検体4,812個を対象に、19ヶ月間の前向き多施設試験を行った。細胞診では診断が確定されない吸引検体577個の中413個からは病理組織学的検体が得られた。組入れ基準を満たした265個の不確定結節に対して、遺伝子発現を調べる新しい方法(発現分類法)を用いて、病理学的診断に基づいてその精度を評価した。

結果:不確定結節265個の中、85個が悪性だった。新しい発現分類法によって、85個の中78個が悪性疑いと正確に同定された。偽陰性であった吸引検体7個中6個において、結節のサンプリングが不十分であったことが示唆された。

結論:以上のデータは、穿刺吸引による細胞診では確定診断できない場合でも、新しい発現分類法で良性と判断される甲状腺結節を持つほとんどの患者にはより保存的な治療が適当であることを示唆する。


この論文に書かれているように、大半の甲状腺結節は良性です。また、たとえ結節ががん性の場合でも極めて予後が良いことが知られています。

福島県では、18歳以下の子供全員の甲状腺を生涯にわたってチェックするという、約36万人を対象とした世界でも類を見ない超大規模な調査が現在進行中です。さらに、これに関連して同様の調査が他県の子供に対しても行なわれようとしていることは、昨日紹介しました。

これらの超音波調査で、大きな結節が見つかった場合は、心配だということで穿刺吸引細胞診までやり、それでも確定しない場合は診断的外科手術まで行くのでしょうか?この論文で紹介された167個の遺伝子の発現を測定する新しい診断検査は低侵襲ですが、まだ日本では承認されていません。ということは、良性結節を持つ何万人もの子供が診断的外科手術を受けることになるのでしょうか?それとも、調査自体が政治的なポーズでしかないのでそこまでは行かないのでしょうか?

PSA検査を前立腺がんのスクリーニングとして用いるのとよく似ていると思います。

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