がん免疫を強化する新しい抗体医薬―抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体

患者の免疫系強化するがん治療薬に効果、米研究
以下は、記事の抜粋です。


がん細胞を直接攻撃するのではなく、患者の免疫系を強化するタイプのがん治療薬2種を用いた臨床試験が成功を収め、より大規模な臨床実験へと進む準備ができたとJohns Hopkins大の研究チームが6月2日、発表した。

2種の治療薬は共に米医薬品大手Bristol-Myers Squibbが開発したもの。がん細胞の保護膜を破壊し、免疫系の働きを助けるという。

New England Journal of Medicine誌と米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された第1相試験では、一般的な治療法で効果が見られなかった非小細胞肺がん、メラノーマ、腎臓がん患者の4人に1人に腫瘍の大幅な縮小が確認された。

免疫細胞の表面に存在するタンパク質PD-1の結合を阻害する「BMS-936558」(抗PD-1抗体)の臨床試験は、Johns Hopkins大のSuzanne Topalian教授が率い、296人を対象に行われた。その結果、非小細胞肺がん患者18%、メラノーマ患者28%、腎臓がん患者27%の腫瘍が著しく縮小した。さらに被験者の5~9%に6か月以上の病状安定がみられたという。

一方、がん細胞の表面に存在するタンパク質PD-L1の結合を阻害する「BMS-936559」(抗PD-L1抗体)の臨床試験は、同大のJulie Brahmer准教授が率い、207人を対象に行われた。その結果、非小細胞肺がん患者10%、メラノーマ患者17%、腎臓がん患者12%に薬の効果が確認された。


2つの元論文のタイトルは、”Safety, Activity, and Immune Correlates of Anti–PD-1 Antibody in Cancer”(論文をみる)と”Safety and Activity of Anti–PD-L1 Antibody in Patients with Advanced Cancer”(論文をみる)です。

がんを患者の免疫力の強化で治療する発想は昔からあります。あの「丸山ワクチン」も同様の発想でした。最近では「がんワクチン」の臨床試験も数多く行われていますが、未だ商業的な成功に至った例はほとんどありません。

唯一の例外は、cytotoxic T-lymphocyte–associated antigen 4 (CTLA-4)を阻害する完全ヒト化モノクローナル抗体イピリムマブ(ipilimumab、Yervoy®)です。CTLA-4はT細胞刺激後に発現が誘導され、T細胞活性化経路をダウンレギュレートする免疫チェックポイント分子です。イピリムマブは、患者の腫瘍に対する免疫を非特異的に増強する薬で、メラノーマ患者の生存期間を有意に延長し、投薬された患者の20%以上が2年以上生存したそうです(記事をみる)。

Programmed death 1 (PD-1)受容体は、下図のように、CTLA-4とは別のT細胞抑制性受容体で、PD-L1とPD-L2という2つのリガンドが知られています。この経路は、京大の本庶先生らによって発見されました。これまでの研究により、PD-1経路の抑制は、CTLA-4経路の抑制よりも効果的にがんに対する免疫反応を増強すると考えられていました。上の2つの研究はこれを臨床的に確認しようとしたものです。

副作用もそこそこあるところがかえってこれらの抗体の効果が本物であることを示唆していると思います。個人的には、がんワクチンなどとの併用効果について知りたいと思います。発展を期待しましょう。

CTLA-4とPD-1を介するT細胞活性化の抑制(nature immunologyより)

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