レバ刺しは生鮮魚介類や生卵よりも安全か?

レバ刺し禁止 食の文化も忘れずに

以下は、東京新聞の社説の抜粋です。


食品衛生法が変わり、牛の生レバーが食べられない。2年以下の懲役、または200万円以下の罰金。レバ刺しを提供した飲食店は、重い罪に問われる。発端は昨年4月、ユッケなどを食べた5人が死亡した食中毒事件。批判を受けた厚生労働省は、厳罰化へと一気に舵を切る。ユッケの場合、表面は加熱するよう義務付けた。

調査の中で、牛の肝からO157が見つかった。肝臓内部に入り込んでおり、加熱では処理できない。このため厚労省は、ユッケより重い提供禁止の断を下した。

食べ物としての生肝は万葉集にも登場する。滋養が高く、権力層に好まれた。戦前にも、モダンな食材として、洋食店のメニューに載った。O157の危険を否定するわけでは無論ない。しかし、食べ物は文化でもある。長く、多くの人に親しまれてきた食材が、一片の通知で簡単に葬り去られてしまうことには違和感がある。

昨年一年間に発生した食中毒のうち、牛レバーの占める割合は約1%。生鮮魚介類によるものの20分の1以下だ。生卵のサルモネラ中毒よりも下回る。

生食は、日本食文化の華だ。禁止の波が「卵かけご飯」に及ばないとも限らない。米国では生卵の提供が原則禁止されている。折しもカリフォルニア州では7月1日から、フォアグラが出せなくなる。飼育法が残虐だからという。

私たち消費者は、食べ物に対して受け身になりすぎてはいないだろうか。危険すなわち禁止では、かえって正しい食習慣や選択眼が身に付かない恐れもある。消費者も食文化の担い手なのだ。禁止は最後の手段である。


上の社説が書いている「昨年一年間に発生した食中毒」のデータを確認するために厚生労働省の食中毒統計資料をみました。23年度の食中毒件数は1062、患者数は21626、死者は11です。その中で魚介類によるものはそれぞれ、137、1351、1です。一方、レバーによるものは記載されていませんでしたが、肉類及びその加工品によるものはそれぞれ、76、895、6です。ついでに、卵類及びその加工品によるものはそれぞれ、5、54、1です。

原因物質別にみると、患者数が多い順に並べると、ノロウイルス(患者数:8619)、サルモネラ属菌(3068)、ウェルシュ菌(2784)、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ(2341)、腸管出血性大腸菌(714)です。ベロ毒素を産生するO157などの大腸菌はまとめて「腸管出血性大腸菌」に分類されています。患者数は21626例中714例と少ないですが、死亡例は11例中7例です。ちなみにサルモネラの死亡例は3例、他の細菌やウイルスでの死亡例は無く、残りの1例は動物性自然毒です。

腹痛と嘔吐を繰り返し、水様下痢便に引き続いて血便が出現するような患者では、腸管出血性大腸菌感染を疑い、便培養を行なうことで確定診断を進めるとともに、便の迅速反応でO157抗原とベロ毒素の迅速反応を調べて早期に診断する必要があります。早期に診断できても溶血性尿毒症症候群(HUS)で死亡する可能性はゼロではありません。実際、上のデータでも、死亡率は約1%です。一方、サルモネラではその1/10、ノロウイルスでの死亡例はありません。

これらを考えると、レバ刺しが生鮮魚介類や生卵よりも安全であるかのように主張するのは問題だと思います。それでも、まだタバコよりは安全だと思いますが、、、

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