関節リウマチ治療薬として用いられるオーラノフィンがアメーバ赤痢などのアメーバ症に有効

A high-throughput drug screen for Entamoeba histolytica identifies a new lead and target

以下は、論文要約の抜粋です。


赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は、腸に寄生する原虫でヒトアメーバ症の原因菌である。アメーバ症は人類全体でみると、死因の第4位であり、罹患する疾病としては第1位である。これは世界レベルでの原虫感染の広がりによるもので、年間約7万の死亡例がある。

NIHは赤痢アメーバを米国における生物兵器防衛対象病原菌リストのカテゴリーBにあげている。赤痢アメーバの治療薬としては、メトロニダゾール(metronidazole)が用いられているが、副作用があり、耐性菌の出現も問題になっている。

この嫌気性原虫に対する薬物スクリーニングを簡易化するために、我々は有効かつ自動化されたハイスループット・スクリーニング法を開発した。この方法を用いて、既にFDAが承認している薬物、オーラノフィン(auranofin)が培養した赤痢アメーバに有効であることを見出した。

オーラノフィンはメトロニダゾールよりも10倍以上強力で、作用メカニズムとしては、赤痢アメーバのチオレドキシン還元酵素(thioredoxin reductase)を阻害することで、原虫の特定の生育期(trophozoite)の酸素感受性を高めると考えられた。

アメーバ性腸炎のマウスモデルとアメーバ性肝膿瘍のハムスターモデルにおいて、オーラノフィンの経口投与は原虫数とホスト側の有害な炎症反応や肝障害を著明に減少させた。今回発見されたオーラノフィンの新しい用法は、アメーバ症に対する有望な治療法として注目され、FDAもその使用を認めた。


日本でも、関節リウマチ(非ステロイド性抗炎症剤で効果不十分なもの)へのオーラノフィン(リドーラ®)の使用が認められています。古くから用いられている薬物で、金を有用成分として含むことから「金製剤」とよばれています。ただし、薬価は先発薬で3mg錠が98.1円(GSK)、ジェネリックの安価なものでは39.4円(沢井)と高価ではありません。

オーラノフィンの副作用として、稀ですが重篤なものとしては、間質性肺炎、骨髄抑制、腎障害、などが知られており、比較的多い軽度なものとしては、下痢、軟便、腹痛、吐き気、食欲不振、口内炎、味覚異常、発疹、かゆみ、肝機能値の異常などがありますが、これらもアメーバ症治療の場合、1週間から10日しか投与しないことがほとんどなので、あまり問題にならないと思われます。

オーラノフィンは最近、マンソン住血吸虫、トリパノソーマ・ブルーセイ、単包条虫、マラリア、リーシュマニアなどにも有効であることが示唆されています。メカニズムとしては、金がチオレドキシン還元酵素(thioredoxin reductase)のシステイン残基と反応して酵素活性を阻害し、グルタチオン合成系を持たないアメーバがホストが産生する酸化ストレスに高感受性になるのだろうと考えられています。

既存薬の新たな効能を示すことは、最も安上がりで安全な薬物開発です。このまま順調に進み、オーラノフィンがアメーバ症の治療薬として活躍することを祈ります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする