ヒト真菌感染症との取り組み

Tackling Human Fungal Infections

以下は、記事の抜粋です。


真菌(カビ)は毎年何十億人ものヒトに感染するにもかかわらず、その重要性についての認識は低い。真菌感染の大部分は比較的軽度のものであるが、一部(といっても何百万人)は、結核やマラリア以上の致死率を示す真菌に感染している。

十分な疫学的データがないので正確な致死率は不明だが、最近の医学的治療法の進歩やエイズのような免疫力を低下させる疾患によって、侵襲的な真菌感染症が増加している。また、このような侵襲的な真菌感染症の致死率は極めて高いにもかかわらず、他の感染性疾患と比較すると、真菌感染症の研究は遅れており、診断も遅い。どうすればこのような不幸な状況を改善することができるだろうか?

最も重要なのは、真菌感染に対する関心を高めることだ。日常的で軽度なものから致死的なものまで、ヒトには600種類以上の真菌が感染することが知られている。また、粘膜、皮膚、毛髪、爪への感染や真菌に対するアレルギーもある。しかし、世界的に影響力のあるWHOやビルゲイツ財団などの国際組織も、真菌感染の重要性を十分に理解しているとは思えない。

緊急に対応する必要がある問題が3つある。第一は、迅速、簡単かつ安価な真菌感染診断法の開発である。現状のものは、反応に時間がかかり、特異性も低い。さらに、真菌感染の初期症状は顕著ではないので、治療開始が遅れがちである。診断が改善されれば、死亡率はかなり改善されると思われる。

第二に必要なものは、より安全で有効な抗真菌薬である。現在臨床に使用される抗真菌薬は数種類あるが、カンジダやクリプトコッカスなどの侵襲的な真菌による死亡率を下げる効果は非常に弱い。死亡率が下がらない原因の大部分は診断や原因菌の同定の遅れによるものだが、抗真菌薬についても、毒性、狭い抗菌域、薬物相互作用、薬物耐性、標的組織への到達の低さなどの多くの問題がある。

これらの問題と抗真菌治療の高コストのために、貧しい国々での真菌感染症の死亡率は非常に高い。このように、より安全で有効な新薬は待ち望まれているのだが、開発中の薬物も少なく、画期的な新薬が近々登場する可能性はほとんどない。

第三に重要なのはワクチン開発だ。真菌に対する免疫機構はかなり明らかにされたにもかかわらず、開発レベルに到達したワクチンはまだない。これは、製薬企業の関心が低いことも理由の一部にあると思われる。ワクチン開発が成功すれば、外陰膣カンジダ症などの感染症やアレルギーに悩む患者にも有益であろう。

真菌症に対する科学的な興味を高め、世界的な投資を増大させるためには、真菌症による被害の実態と経済的インパクトについての正確なデータが必要である。現在のところ、米英の主要な資金提供機関は、それぞれの感染症関連予算の約2%しか真菌感染症に出資していない。真菌感染の脅威に怯える人々は世界中で増加し続けている。ヒト真菌感染症に取り組むという挑戦に対してもっともっと高い優先順位をつけるべきである。


本記事は、サイエンス誌の5月11日号に掲載されたGordon D. Brown、David W. Denning、Stuart M. Levitzという3名の大学教授による論説です。

我々の研究室では、真菌症の病原菌に遺伝学的には非常に近いけれども病原性のまったくない分裂酵母をモデル生物として用いて、新しい抗真菌薬の開発や薬物耐性の克服に向けた研究を行っています。研究室の学生やスタッフだけではなく、一般の人々にも真菌研究の重要性を理解してもらうために本記事を紹介しました。

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コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    今晩は、遅いコメントで済みません。
    何処にでも居るそうですがこう言うのも特効的に撃退できる薬剤あるといいですね。
                       taniyan