若手研究者: 先端研究にクビの不安 有期雇用が一般的 ―― ヘンな記事です

若手研究者:先端研究にクビの不安 有期雇用が一般的

批判目的ですので、以下に毎日jpの記事をそのまま紹介します。


先端研究に任期付きで従事している若手研究者の間で、契約が更新されない「雇い止め」の不安が広がっている。5年を超えて同じ職場で働いた有期雇用の社員に無期雇用の道を開く「労働契約法改正案」が成立した場合、雇用主が先回りして5年以内に契約更新を拒む動きが出るとの観測があるためだ。科学技術政策の司令塔を担う政府の総合科学技術会議は不安に応えるため、同法を所管する厚生労働省に意見書を提出するなど、改善に向けた検討を始めた。

生命科学や先端技術など、研究費を集中投下して世界級の成果を狙う「プロジェクト型」と呼ばれる研究は多くの人手が必要だが、国立大や研究機関では人件費に充てる国の交付金が毎年削減され、正規雇用できる人数は限られるため、有期雇用が一般的だ。

多くは30代で、3~5年の任期で契約したり、1年ごとに契約を更新したりしている。東京大では教員の約2割に当たる901人、大阪大は約15%の493人(いずれも11年5月1日現在)が有期雇用。研究を支える人材でありながら、無期雇用より低賃金で身分も不安定だ。

同会議が19日に実施した若手研究者からの聞き取りでは、東北大の住井英二郎准教授が「大学は無期雇用を増やすのが難しく、現状では雇い止めになる恐れが大きい」と訴えた。博士号を取得しても正規雇用で就職できず任期付きで働く「ポストドクター」の問題に詳しい近畿大の榎木英介講師は「若者はリスクを取らない傾向があり、5年で首を切られる研究職は避けるだろう。本来、正規と非正規の格差をなくすべきで、法改正で問題は解決しない」と指摘した。

改正案は非正規労働者の雇用安定を目的に今国会に提出されたが、審議入りは未定。研究者を多く雇用する京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長が3月、古川元久科学技術担当相に「若い研究者は将来に不安がある。既婚者は家族の希望で条件のいいところへ転職してしまい、優秀な人が先端研究の現場から逃げてしまう」と申し入れている。


榎木さんは記事に書かれていることを断じて発言していないそうです。榎木さんらが運営しているSSAメールマガジンに書いてありました。

これ以外にもヘンなところが多すぎる記事です。以下にその例を2つあげます。

1. 「正規雇用できる人数は限られるため、有期雇用が一般的だ。」→正規雇用と有期雇用は反対の意味ではなく、有期の正規雇用もあります。

2. 「(有期雇用者は)研究を支える人材でありながら、無期雇用より低賃金で身分も不安定だ。」→これはウソです。身分は不安定かもしれませんが、賃金は同等です。
今回の「労働契約法改正案」に賛成か反対かは難しい問題です。私の意見は、榎木さんの資料の最後にあるものに近いので以下に紹介します。

「結局のところ労契法がどういう内容になろうと『正規&終身雇用の教職員を増やせ』というのが現状の若手研究者問題≒ポスドク問題に対する唯一の解であるはず。それは言うまでもなく労契法改正問題の外側にある本質そのものです。その唯一の解が『実現できない』というのであればそもそも何も解決しないのだから議論するだけ無駄なのです。それも分からずに現状維持を叫び続けるのは、愚の骨頂というものでしょう。素直に悪化し続ける現状を甘受する方がよほどマシだと僕は思います。」

榎木さんがご指摘のように、アカデミア側で現状を享受している雇用者も現状維持を叫んでいる可能性があることを忘れずに、この問題を考えて欲しいと思います。

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