個人の全ゲノム解析は、大半のがんなどの普通の病気の予測にはほとんど役に立たない

遺伝子検査によるがんなどの病気予測には限界=米研究

以下は、記事の抜粋です。


遺伝子検査を行っても、大半の人々については病気の発症を予測できないだろうと警告する新たな研究結果が米国で発表された。

個人の全DNA配列を解析する目的は、生涯を通じて病気の予防や治療の指針として使える可能性のある遺伝子の変種を見つけることだ。それによって最終的には「テーラーメイド医療時代」を開くことを目指している。

個人の全ゲノム情報の解析は、病気の進行の仕方を知るのに役立つほか、どの患者がどの薬によく反応するかや、逆にどの副作用に苦しむかを予測するヒントが提供される。しかし、がんのような複雑な病気を予測するのはもっと困難だ。患者のライフスタイル、遺伝子の突然変異、それに環境的な要因が関係するからだ。

Science Translational Medicine誌に4月2日掲載されたこの研究は、5カ国に住む何千人もの双生児から収集したデータに基づいている。研究結果により遺伝子解析のもたらす健康状態予測能力が過大評価されている可能性が示唆されたという。

24の病気のうち23の病気についての結果では、大半の被験者の試験結果はネガティブとなり、病気にかかるリスクが低いとされた。しかし、実際には罹病リスクが一般の人々よりもごくわずかに低いだけの可能性が高い。遺伝子解析を受けて医師のカウンセリングを受けなかった場合、安心だという錯覚に陥る恐れがあるという。

例えば、米国の約1億5600万人の女性のうち、生涯のある時点で卵巣がんにかかる人の数は約220万人と予想される。しかし、全ての米国女性が全ゲノム解析を行ったとしても、テストでは10万人しか特定できない。つまり、残りの210万人の女性はがんになるという警告を受けられないことになるという。

他方ゲノム解析は、ハンチントン病のように1つの遺伝子異常により生じる疾患のリスク評価には有用な可能性がある。しかし、多くの遺伝子とその相互作用から影響を受けるがんの場合はもっと複雑になる。今回の研究結果は、家族歴がない大半の人々のがんを予測するには、遺伝子解析があまり有用でないことを示している。


元論文のタイトルは、”The Predictive Capacity of Personal Genome Sequencing”です(論文をみる)。このブログでも取り上げましたが、がんの全ゲノム解析が進み、原発巣のがんと転移したがんとではゲノムが異なることがわかってきました。このような情報を知ると、全ゲノム情報がわかれば、何歳ぐらいでどんながんになるかわかりそうな気もしますが、そうではないだろうというのがこの論文の結論です。

記事によると、ロシュはDNA解析装置の日常的な利用が増えるため、売上高が2015年までに21億ドルにまで伸びると予想し、遺伝子解析装置メーカーの米イルミナ社に対して、65億ドルでの敵対的買収提案を行ったそうです。また、3年前は一つのゲノム解析に30万ドル以上かかったのが、現在は3000ドル、今年末までには1000ドルに下がるだろうとしています。研究者としては値下がり大歓迎です。

個人やがん組織の全ゲノム配列を決めることは研究レベルでの有用性はあっても、公衆衛生的にはDNAチップで十分ということになると、ロシュの投資は空振りになる可能性もあると思いました。

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