スタチンを超える新規高コレステロール治療薬への開発競争:PCSK9阻害薬

The race for the next big cholesterol fighting drug
以下は、記事の抜粋です。


スタチンとは異なる新しい作用メカニズムの高コレステロール治療薬をめぐる開発競争が始まった。アメリカ心臓学会において、「PCSK9阻害薬」とよばれる2つの異なる薬物が臨床試験の初期段階において好成績を示したことが報告された。

PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin 9)阻害薬は、「悪玉」のLDLコレステロールを減らす働きをもつLDL受容体の分解を抑制してその数を増やすことで、血中LDLコレステロールを減少させる。現在知られているCSK9阻害薬はすべて、遺伝子組換え技術によって作成された抗PCSK9モノクローナル抗体で、PCSK9がLDL受容体の分解を促進するのを阻害する。

SanofiとRegeneronという製薬メーカーによって開発されたREGN727というモノクローナル抗体を用いた第1相臨床試験の結果がNEJM誌の3月22日号に報告された(論文をみる)。一方、3月25日、Amgen社はAMG145という実験的PCSK9阻害薬の第1相臨床試験に成功したと報告した。報告によると、スタチン服用にも関わらず高コレステロール血症を示す被験者51例において、AMG145の追加投与は最高で81%までLDLコレステロール値を低下させ、重大な副作用は認められなかったという。

Amgen社はスタチン抵抗性の抗コレステロール患者を対象とした第2相臨床試験を開始し、本年の後半には結果が得られるだろうと発表した。また、REGN727の第2相試験結果はJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。REGN727を投与された患者では血中LDLコレステロールが40-72%低下したという。

より多人数かつ長期間の臨床試験が必要だが、PCSK9阻害薬の有効性と安全性が確立された場合は、スタチンによる副作用が大きくて投与できない患者やスタチンに反応しない患者などに非常に有用だと考えられている。

問題は、非常な高価格が予想されることである。また、他の抗体医薬では長期投与によって心臓や腎臓の問題や高血圧がおこっていることも注意に値する。現在、Pfizer、Merck、Novartisなどの製薬メーカーもPCSK9阻害薬を開発中といわれている。


コレステロール代謝におけるPCSK9の重要性が注目されたのは、LDL受容体と同様、その遺伝子変異が家族性高コレステロール血症をひきおこしたからです。LDL受容体と異なるのは、機能獲得型変異が高コレステロール血症、機能欠失型変異が低コレステロール血症に関連することです。

PCSK9は構造上、プロフォームの蛋白質を切断して機能のある成熟タンパク質にするエンドプロテアーゼファミリーに属しています。このファミリーのタンパク質は、インスリンなどのホルモンやHGF受容体などの受容体、さらには血清蛋白質などを成熟型にすることが知られています。

PCSK9ノックアウトマウスは見かけ上野生型と変わりなく正常に生育します。しかも血中LDLはかなり低くなります。さらに、機能欠失型変異のヒトでも血中LDLが低く、冠状動脈疾患の発症率が一般の人よりも有意に低いことがわかっています。これらの事実は、PCSK9活性を阻害する薬物が良い高LDLコレステロール血症治療薬になる可能性を示しています。

単純には、PCSK9がLDL受容体を分解してLDL受容体の数を減少させるために、機能獲得変異で血中LDLが増加すると思われますが、これは証明されていません。PCSK9がERで自己分解すること、分解されたPCSK9が分泌されてLDL受容体と結合しLDL受容体の分解を促進することがわかっています。これまでのところ、PCSK9自身以外に生理的基質はみつかっていません。

PCSK9はLDL受容体の約40アミノ酸からなるEGF-Aドメインとよばれる細胞外領域と特異的に結合します。この結合を阻害するような低分子量化合物はまだみつかっておらず、これまでのところ抗PCSK9モノクローナル抗体がPCSK9阻害薬として使われています。しかし、ブロックバスターになるには経口で摂取できる低分子量化合物であることが必要だと思います。