多発性硬化症に対するラキニモド(laquinimod)のプラセボ対照臨床試験

Placebo-Controlled Trial of Oral Laquinimod for Multiple Sclerosis

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:2件の概念実証(proof-of-concept)臨床試験により、ラキニモド(laquinimod)は再発寛解型多発性硬化症患者の疾患活動性を低下させるというエビデンスが得られている。

方法:24ヶ国の139施設において、無作為化二重盲検第3相臨床試験を行った。再発寛解型多発性硬化症患者計1,106例を、経口ラキニモド0.6mg群とプラセボ群に無作為に割り付け、24ヶ月間投与を行った。主要エンドポイントは、24ヶ月間で計算した年間再発率とした。副次的エンドポイントは、障害の進行、ガドリニウム増強病変数、MRI T2強調画像での新規病変または拡大病変数などとした。

結果:ラキニモドによる治療はプラセボと比較して、年間平均再発率のわずかな低下(0.30±0.02 対 0.39±0.03,P=0.002)と障害の進行リスクの低下(11.1% 対 15.7%)に関連した。副次的エンドポイントの病変累積数なども、ラキニモド群のほうがプラセボ群よりも少なかった。AAT値が正常範囲上限の3倍以上に一過性に上昇した患者は、ラキニモド群24例(5%)、プラセボ群8例(2%)だった。

結論:本第3相臨床試験において、再発寛解型多発性硬化症患者に対してラキニモドを1日1回経口投与することで、障害の進行が遅延し、再発率が低下した。


多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)は、欧米の白人に多い病気ですが、わが国では比較的まれで、10万人あたり1~5人程度とされています。若年成人に発病することが最も多く、平均発病年齢は30歳前後、男女比は1:2~3位です。

MSは、脳や脊髄に自己のリンパ球などが浸潤する自己免疫疾患で、神経組織の炎症と神経細胞の軸索を絶縁している髄鞘の脱髄がおこります。再発と寛解をくり返す(relapsing-remitting)RR-MSに対しては、interferon-βとglatiramer acetateが用いられます(これは欧米の話、glatiramer acetateは日本では未承認)。しかし、効果は限定的で、副作用もあります。

重症の患者には、抗α4インテグリン単クローン抗体であるnatalizumabやmitoxantrone(どちらも日本未承認)が用いられます。これらには重大な副作用があります。また、これらの薬物はすべて、注射あるいは点滴での投与しかできないので、経口薬の出現が強く望まれています。

最近、フィンゴリモド(fingolimod, FTY720)という経口薬が、プラセボやinterferon-βよりも有効であるという臨床試験結果が報告され、ロシアでは承認されました(関連記事をみる)。フィンゴリモドは、生理活性物質スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)アナログとして働きます。フィンゴリモド投与により、S1Pが結合できるS1P1受容体数が減少し、T細胞はS1Pに反応しにくくなります。その結果、T細胞の遊走能は減弱し、神経組織に浸潤するリンパ球が減少し、炎症も抑制されると考えられています。

ラキニモドも語尾が「モド」ですので、フィンゴリモドの類似薬かと思ったのですが、まったく違う薬物のようです。作用メカニズムは今のところ不明ですが、以下のようなことが報告されています。

1)液性免疫も細胞性免疫も抑制しない。
2)実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis、EAE)を抑制する。
3)白血球の中枢神経系への遊走を抑制する。
4)軸索を保護する。
5)BDNF(brain-derived neurotrophic factor)を増加させる。などなどです。

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