ハエも失恋するとやけ酒に走る?

ハエも失恋するとやけ酒に走る?米研究

以下は、記事の抜粋です。


メスに交尾を断られ欲求不満になったオスのハエは、悲しみを紛らわすため酒に逃げる――。米大研究チームが3月15日、ハエと人間の意外な共通点を明らかにする実験結果をScience誌に発表した。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のUlrike Heberlein教授率いるチームは、オスのショウジョウバエを交尾経験のあるメスおよび未経験のメスと一緒に容器に入れ、行動を観察した。すると未経験のメスはオスの求愛を受け入れすぐに交尾をしたが、交尾後のメスは一定時間、オスに興味を示さなかった。これは交尾の際にオスが精子と一緒に送り込む性ペプチドが原因だ。一方、交尾を拒絶されたオスは、たとえ未経験のメスと一緒にされても求愛行動をしなくなった。

そこで、交尾を拒否されたオスをメスと隔離し、15%のアルコールを含む餌と通常の餌の2種類を設置した容器に入れたところ、これらのオスはアルコール入りの餌を浴びるように摂取し始めた。メスに拒絶されたオスの脳内では、神経伝達物質「ニューロペプチドF(NPF)」が減少していることが確認された。一方、メスと交尾をして性的に満たされたオスの脳内のNPFレベルは高かった。研究チームは、NPFの脳内レベルによってアルコールへの衝動が引き起こされていると見ている。

論文を主執筆したGalit Shohat-Ophir氏によると、NPFは「脳内の報酬のレベルを示し、報酬を求める行動へと変換するスイッチの役割をしている。メスに拒絶されたオスは、減少したNPFの代わりに、アルコール摂取によって報酬欲求を満たすのだ」という。この仕組みは、人工的にNPFを増減させたハエでも確認できた。

人間の脳にも類似の「ニューロペプチドY」という神経伝達物質が存在する。このため研究チームでは、人間の脳がアルコール依存や薬物依存に陥るメカニズムを解明するのに今回の発見が役立つのではないかと期待している。UCSFの研究チームによれば、現在「ニューロペプチドY」に不安障害などの気分障害や肥満を緩和する働きがあるかを調べる臨床試験が行われているという。


ヒトを含む多くの動物は、種の生存に適した行動に対して報酬を与える「神経報酬システム」を持っています。このシステムによって、我々はセックス、食べること、社会活動などの種の生存に必要な行動をとった時に、喜びやポジティブな感情を持つと考えられています。

この神経報酬システムに働いて喜びを刺激する薬物は薬物依存や中毒をひきおこします。本論文の研究者らは、NPFという動物のNPYに良く似た神経ペプチドが、この神経報酬システムにおいて重要な働きをしていると主張しています。つまり、脳内でNPFが充分にあれば報酬に満たされ、欠乏するとアルコール消費などの行動に走るとしています。「メスにフラれて焼け酒」という行動は何億年も続いていました!

研究者らは、ヒトではNPYがこのような働きをしており、NPYシステムを適切に活性化すれば心的外傷を残すようなつらい経験の悪影響を打ち消し、薬物依存なども治療できるのではないかと考えているようです。既に欧米では、不安、PTSD、情緒障害、肥満などに対するNPY系作動薬の臨床試験が行なわれているそうです。本論文の結果から考えるとこのような薬物は、アルコール依存など報酬反応に基づく依存症の治療にも有効な可能性があります。

ハエのセックス(成功例と失敗例)とアルコール摂取

ハエのやけ酒(Scientific Americanより)

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