「アンチエイジング」化に成功=実験マウスで寿命3割アップ ヒトへの応用は?

「アンチエイジング」化に成功=実験マウスで寿命3割アップ-東北大

以下は、記事の抜粋です。


快活さを保ちながら寿命も長くなる「アンチエイジング・マウス」を生み出すことに成功したと、東北大の片桐秀樹教授(代謝学)らのグループが3月6日付のサーキュレーション誌に発表した。これまでは、食事制限により活動量を落とし、寿命を伸ばす研究が主流を占めていた。

研究では、血管の中で血液と接する層を形成する血管内皮細胞に着目。遺伝子操作でこの細胞層で炎症反応が起こりにくくした。血管内皮細胞での炎症を抑えた結果、筋肉への血流やエネルギーを作る細胞が増加。睡眠を除いた時間帯の活動量も増加し、老化の抑制につながったと考えられるという。平均寿命は通常のマウスに比べて約3割延びていた。

片桐教授は「老化そのものが抑えられたのは重要な発見であり、血管内皮細胞の炎症反応が老化の進展や寿命と関係していることが初めて分かった。アンチエイジング療法の開発につながることが期待される」と話している。


元論文のタイトルは、”Blockade of the Nuclear Factor-B Pathway in the Endothelium Prevents Insulin Resistance and Prolongs Life Spans”です(論文をみる)。

NF-kBは、様々な炎症性サイトカイン刺激により活性化される転写因子で、炎症病態の発症と維持に重要と考えられています。通常NF-kBは細胞質内で、抑制タンパク質であるIkBと複合体を形成して不活性型で存在しています。サイトカイン刺激で上流のIKKが活性化されると、IkBがリン酸化されて分解され、NF-kBが核内に移行して転写活性化因子として機能します。

本研究では、ヒトのIkBのIKKによってリン酸化されるアミノ酸をアラニンに置換し、リン酸化/分解を受けないIkBを用いています。このようなIkBを人工的に発現させると上流のリン酸化酵素が活性化されても分解されずにNF-kBを抑制し続けます。つまり、多くのNF-kBは不活性型のまま細胞質内に留まります。このようなIkBを「ドミナント・ネガティブIkB(DNIkB)」とよびます。これは以前からある発想です。

研究者らはDNIkBをマウスの血管内皮細胞特異的に発現させるために、内皮細胞特異的な受容体チロシンキナーゼTie2のプロモーターを用いました。これも以前からある方法ですが、DNIkBをTie2のプロモーターで発現したところ、血管内皮細胞におけるNF-kB経路が特異的に阻害されたと思われるマウスができ、その寿命が野生型のマウスよりも少し長かったという話です。

ステロイドはNF-kBに直接結合してその転写活性を阻害します。NF-kBの作用を特異的に阻害して炎症性疾患を治療するという試みは20年以上前からあり、核酸医薬なども含めて数多くのNF-kB阻害薬が開発されてきましたが、臨床効果が広く認められたものはまだありません。私は、今のところヒトで血管内皮細胞特異的にNF-kB経路を薬物を用いて阻害することは不可能だと思います。また、できた場合でもマウスと同じ「アンチエイジング効果」が認められるのかは非常に疑問です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする