抗がん剤がアルツハイマー病に効果―マウスの実験で

抗がん剤がアルツハイマー病に効果―マウスの実験で
以下は、記事の抜粋です。


アルツハイマー病のマウスに抗がん剤を投与したところ、精神機能や社会生活能力が改善し、嗅覚が回復した。

アルツハイマー病は脳にβ-アミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積する。今回の研究では、ベキサロテンという皮膚がん治療薬がアルツハイマー病のマウスの脳から数日間でβ-アミロイドを除去したことが分かった。ベキサロテンは米国ではタルグレチンという商品名でエーザイが買収し販売している。

アポリポタンパクE(アポE)と呼ばれるタンパク質が「ゴミ捨て部隊」としての働きをして、β-アミロイドの分解を助けることが知られている。論文の著者であるCase Western Reserve大学のゲーリー・ランドレス博士は、脳がより多くのアポEを生成できるようになれば、β-アミロイドの分解が促進されるだろうと考えた。

ベキサロテンはアポEの作用を助けるタンパク質を活性化することで知られる経口薬だ。同博士は2009年、研究室に新しく入ってきたばかりの大学院生に対し、「アルツハイマー病マウス」に同薬を投与するよう依頼した。すると、「3日後には、脳のβ-アミロイドがほぼ消えていた」という。その当時を振り返って、同博士は「最初は院生が実験を台無しにしてしまったのかと思った」と語った。

アルツハイマー病のような症状を示すマウスにこの薬を投与すると、マウスの認知機能、社会的機能、それに嗅覚的機能は急速に改善した。

タルグレチンの特許は今年失効し始める。これは、製薬会社各社がアルツハイマー病治療薬候補としてベキサロテンに飛びつくのに及び腰になっている理由の1つかもしれない。ベキサロテンがアルツハイマー病治療薬として承認されるのはもちろん、「適応外使用」の準備が整うのでさえも、ずっと先になる。適応外使用とは、承認された目的以外で医薬品を処方することだ。ランドレス博士は最初のステップとして、十数人の患者を対象にした安全性の試験を行う計画だ。


元論文のタイトルは、”ApoE-Directed Therapeutics Rapidly Clear β-Amyloid and Reverse Deficits in AD Mouse Models”です(論文をみる)。

アポEはVLDL、IDL、HDLなどのリポ蛋白を構成している主要なアポリポ蛋白の一つで、317個のアミノ酸からなる蛋白質として合成され、299個のアミノ酸からなる成熟蛋白として細胞外に分泌されます。C末端側に脂質結合部位があり、中央部にLDL受容体への結合部位があると考えられています。

アポE遺伝子には3つのアリルがあり、それぞれに対応するE2、E3、E4の3つのアイソフォームが存在します。アポE3は野生型で、E4はアルツハイマー病(AD)の危険因子と見なされています。

アポEの転写は、核受容体のPPARγとliver X receptors (LXR)とretinoid X receptors (RXR)とが協調して誘導されます。ベキサロテン(bexarotene)はRXRのアゴニストです。本論文では、マウスのアルツハイマー病に経口投与すると、数時間以内にアポE依存的に可溶性β-アミロイドの消失を増強し、β-アミロイド斑領域は72時間以内に50%以上減少しました。

さらに、上の記事に書かれているように、ベキサロテンはマウスの認知機能、社会的機能、嗅覚的機能および神経回路機能をは急速に改善したそうです。このように、RXRの活性化によって生理的なβ-アミロイド除去機能が刺激され、β-アミロイドによる機能異常が急速に回復したと報告しています。

エーザイは2006年、再発性皮膚浸潤性T細胞リンパ腫治療剤のタルグレチンなどのがん関連4製品を米国ライガンド社から2億5百万ドルで買収し、全世界での独占的な権利を有しています。ベキサロテンはその癌治療効果と小さな副作用により、2000年にFDAに認可されていますので、アルツハイマー病治療のための臨床試験への移行は早いことが予想されます。ヒトでもマウスと同様の効果があるのかはまだわかりませんが、エーザイにとって非常に安い買い物だったかもしれません。

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