p53変異はメバロン酸経路を活性化して乳腺組織をがん化する。スタチンが乳がんに有効?

Statins show promise against breast cancer growth

以下は、記事の抜粋です。


スタチンは、広く高コレステロール血症治療薬として用いられているが、最新のがん研究によると、スタチンは乳がん細胞の増殖抑制に効果があるらしい。

米コロンビア大学のCarol Prives氏らの研究チームは、p53遺伝子に変異があるがん細胞をスタチンで処理したところ、細胞は制御不能な細胞増殖を停止あるいは死亡したと報告した。研究成果は1月20日、Cell誌に掲載された。

この現象は重要である。というのは、乳がん細胞にはp53遺伝子に変異をもつものが知られているからである。p53遺伝子はがん細胞の制御不能な増殖を防ぐ働きがある。従って、もしもスタチンにp53変異細胞の増殖を抑制する働きがあれば、乳がんにも有効なはずである。もちろん、スタチンが乳がん治療に有効かどうかは、さらなる実験や臨床試験を経た上で結論する必要がある。


元論文のタイトルは、”Mutant p53 Disrupts Mammary Tissue Architecture via the Mevalonate Pathway”です(論文をみる)。

上の記事で「乳がん細胞にはp53遺伝子に変異をもつものが知られている」とあります。どのくらいの比率なのか調べてみたところ、アメリカでは全乳がんの26%という報告がありました(報告をみる)。

p53は393アミノ酸からなり、がん抑制遺伝子TP53によってコードされます。p53は転写活性化因子であり、DNAダメージなどの各種ストレスなどによってリン酸化やアセチル化などの翻訳後修飾を受けて活性化されます。多くのヒトがんにおいてp53変異が報告され、p53遺伝子の変異は抗p53抗体の出現と相関があるとされています。

本論文では、特定の変異をもつp53がメバロン酸経路の複数の遺伝子のプロモーターに結合して発現を増やし、経路を活性化するとしています。メバロン酸経路の活性化とがん化が相関しており、メバロン酸の添加でがん化が促進し、スタチンの添加でがん化が抑制されるそうです(下図)。さらに、TP53に変異があるヒト乳がん組織では、メバロン酸経路遺伝子の発現が高い症例が多いことも示しています。

問題は、スタチンが乳がんに有効かどうかです。既にいくつかの臨床研究があるようですが、はっきりとスタチンの乳がんに対する有効性を示したものはありません。論文では、ホルモン受容体を持たない乳がんでスタチンが有効だったという報告を紹介しています。この問題の答えを出すには、p53変異をもつ乳がんに対するスタチン投与の効果を調べる臨床試験の結果が必要です。

乳がん治療に際して、エストロゲン受容体とHER2の発現とともに、p53変異を確認する日が来るのでしょうか?

p53変異によるメバロン酸経路の活性化と乳腺組織のがん化(Cellより)
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