死なせる医療

胃ろう:使わない選択肢も可能に 老年医学会が指針試案

以下は、記事の抜粋です。


高齢者が口から食べられない場合に実施する「胃ろう」などの人工的水分・栄養補給について、日本老年医学会の作業部会は、医療・介護従事者向けの指針試案を作成した。胃ろうなどが本人のためにならないと考えられる時は実施しなかったり中止したりする選択肢があると患者自身や家族に示すことができるとしている。

患者の腹に穴を開け管を通して直接栄養を送る胃ろうが普及し、寝たきりで意識がほとんどない終末期の高齢者が何年も生き続けることが可能になっている。しかし、市民や医療・介護現場からは、患者本人の意思や家族の思いなどを重視し、自然な最期を迎える選択肢があっていいという考え方が出ていた。

これまで人工栄養補給に関する指針はなく、同部会は患者や家族のために必要として検討に着手。試案では、患者本人の生き方や価値観を尊重したうえで、家族を交えて話し合いながら胃ろうなどを実施するか否かを決めるべきだとしている。

試案はウェブサイトで公開している。


「日経メディカル」という雑誌の今月号の特集は、「死なせる医療~迫り来る『多死時代』にどう備える~」です。上の記事と同じようなテーマですが、もう少し深く問題を扱っており、今まで気づかなかった問題の存在を知りました(サイトをみる)。

その1つは、死ぬ場所です。「団塊の世代」の高齢化とともに、今後わが国では年間死亡者数が急増し、医療機関や患者の自宅以外の場所で患者が死ぬケースが増えると考えられています。その理由は、家族の介護力の低下と独居高齢者の増加によって在宅での死は難しくなってきたことと、「死に場所」として期待される介護施設の数が絶対的に不足していることです。既に、問題が多いとされる「寝たきり専用賃貸住宅」などで最期を迎える高齢者が出始めています。

予測では、2030年には今より45万人以上多い約165万人が年間に死亡し、介護施設の増床や在宅医療の拡充を前提としても、医療機関で約89万人、自宅で約20万人、介護施設で約9万人が精一杯で、約47万人がこれら以外の場所で最期を迎えることになるというのです。平均余命から考えると、私自身の問題そのものです。

もう1つの問題は、非癌患者の終末期医療の問題が大きいことです。「2人に1人ががんに罹患し、3人に1人はがんで死ぬ」という事実は、がんが多い病気であることとともに、あたり前ですが、がん以外で死ぬヒトはがんで死ぬヒトの2倍もいるということも示しています。特に高齢者では「非がん」による死亡が大部分です。

がんの終末期医療は、07年の「がん対策法」によって充実してきており、疼痛管理なども「緩和ケア」の徹底によってかなり改善しています。一方、非がんでは、終末期であることの認識や予後予測が難しいという問題があり、疼痛はがん患者と同じようにあるにもかかわらず緩和ケアに使える薬剤も限られています。

これらの予測や事実をもとに日経メディカルは、「治療控えや中止も選択肢となってくるでしょう。」「これからの医師の仕事は『治す』ばかりではなく、『死なせる』ことにもあることを、医師自身が認識することも必要でしょう。」と書いています。言葉は強いですが、日本老年医学会のガイドラインとニュアンスは同じです。

医学の進歩によって、ヒトの寿命が生物学的限界に近づいています。私自身も、どこでどう死ぬかを考えなければならない年齢になりました。

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