RNAiスクリーニングによってBrd4が急性骨髄性白血病の治療標的であることが同定された

RNAi screen identifies Brd4 as a therapeutic target in acute myeloid leukaemia

以下は、論文要約の抜粋です。


エピジェネティックな経路は、クロマチン修飾を介して遺伝子発現を制御できる。がん細胞はエピジェネティックな特性が変化し、クロマチン調節装置によって発がん性の遺伝子発現プログラムを実行する。

クロマチンの変化は理論的には可逆的で、薬物によって制御できることもあるが、がん細胞がエピジェネティックな制御因子にどのように依存しているかが不明なため、そのような経路を標的にしてがんを治療することは、今のところ難しい。

急性骨髄性白血病(AML)は異常なクロマチン状態と関連することが多い侵襲性の造血器悪性腫瘍である。今回我々は、AMLにおいて、エピジェネティックな脆弱性を探すための包括的な方法について報告する。遺伝学的性質が確定したAMLのマウスモデルで、既知のクロマチン調節因子を標的とする小ヘアピン型RNA(shRNA)のカスタムライブラリーをスクリーニングすることにより、Brd4(bromodomain-containing 4)タンパク質が疾患の維持に不可欠であることを明らかにした。

shRNAあるいは低分子阻害薬JQ1を用いてBrd4を抑制すると、in vitroおよびin vivoではっきりとした抗白血病効果が得られ、骨髄細胞の終末分化や白血病幹細胞の消失が認められた。さまざまなヒトAML細胞株や原発性白血病患者のサンプルがJQ1に対する同様の感受性を示したので、JQ1はさまざまなAMLサブタイプに対して有効であることが明らかになった。

Brd4抑制の効果の少なくとも一部は、Brd4がMyc発現を維持して異常な自己再生を促進するためなので、JQ1はがん細胞のMYCを抑制する薬理学的手段となることを示唆している。我々の結果は、Brd4の低分子化合物による阻害がAMLで、そしておそらくは他のがんでも、有望な治療戦略であることを確立し、また、直接的な薬理学的治療に応用できるエピジェネティックな脆弱性を明らかにするため、RNA干渉(RNAi)スクリーニングが有効であることを強く示している。


本スクリーニングでは、AMLのがん化維持に必要なエピジェネティック経路を探索するために、243のクロマチン制御因子を標的とした1,094個のshRNAsからなるライブラリーが使用されました。この243個は、エピジェネティック情報の「書き屋」と「消し屋」などのクロマチン修飾酵素をほとんど全てカバーしています。また、これらのshRNAsの発現は、doxycyclineを用いたTet-onシステムによって誘導されます。厳密なコントロールを設定したスクリーニングによってBrd4が同定されました。

真核生物では、DNAはヒストンと結合してヌクレオソームと呼ばれる複合体を形成し、通常は不活性化状態になっています。ヒストンの高アセチル化領域では遺伝子の転写が活性化され、低アセチル化領域では転写が不活性です。ヒストンのアセチル化は、ヒストンアセチル化転移酵素(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)によって制御されています。これが上記の「書き屋」と「消し屋」です。

BET (bromodomain and extra-terminal)ファミリータンパク質は、そのブロモドメインでヒストンのアセチル化されたリジンを認識することにより、転写活性化因子として機能します。BRD4はこのようなBETファミリータンパク質の1つで、転座によってNUTとの融合タンパク質をつくり、NUT midline carcinoma(NMC)という致死性の高い悪性腫瘍を生じることが知られています。JQ1は、アセチル化リジン結合ドメインの拮抗的阻害薬で、NMCに対しても有効だと考えられています(関連記事参照)。

本論文は、RNA干渉(RNAi)スクリーニングによって、エピジェネティック因子の1つBRD4が薬物標的分子として有望であることを明らかにした興味深い報告です。

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