抗凝固薬ダビガトラン(経口直接トロンビン阻害薬、プラザキサ®)の利点と欠点

新規抗凝固薬の処方にあたってのJ-CLEARからの提言

ダビガトランは、国内初の経口直接トロンビン阻害剤で、3月の販売開始から既に7万人以上に使用されています。医師の新規処方ランキングでも、6月と7月はトップだったそうです。しかし、関連性が否定できない重篤な出血性副作用による死亡が5例報告されているとして、厚生労働省は8月12日付で、安全性速報(ブルーレター)による周知と添付文書の改訂をメーカーに指示しました。また、臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は上記のように提言を行ないました。以下はその提言でまとめられているダビガトランの利点と欠点です。


1)ダビガトランの利点
●納豆、大量の野菜などビタミンKを多く含む食品の制限が少ないこと。
●定期的な採血の必要がないこと。
●日本人を含む国際大規模臨床試験においてワルファリンに劣らない脳卒中予防効果と安全性が確認されている薬剤であること。

2)ダビガトランの欠点
●採血による薬効評価のモニターができないために個々の病状と変化に応じた用量調整が困難なこと。
●半減期が非常に短いために飲み忘れによって薬効とリスクが大きく変動すること。
●副作用発現時において対応する拮抗薬がないこと。
●高価であること(150mg1日2回処方の場合,1日あたり530円)
●予測される出血イベントとして重篤な出血は年間約3%、生命に危険を及ぼす出血は約1%、頭蓋内出血は約0.4%にみられること。
●中等度以上の腎障害(eGFR 30-50mL/分/1.73m2)では血中濃度が約3倍になり,出血リスクもさらに高くなる。 高度腎障害(eGFR 30mL/分/1.73m2未満)では血中濃度は約6倍にも上昇し,使用禁忌であること。
●他の抗血小板薬と併用している場合には出血リスクがさらに高まること。
●75歳以上の高齢者では出血のリスクがさらに高まること。


わが国では、心房細動患者の脳卒中リスクに対して用いられる薬物は、これまでワルファリンしかありませんでしたが、上記のように今年からダビガトラン(プラザキサ®)が使えるようになりました。

ダビガトランは、食物中のビタミンKの影響を受けないため効果が安定しており、血液凝固能のモニタリングが不要だとされています。これが、「ワルファリンに比べて使い勝手がよい」という誤解を生んでいると思われます。

実際には、半減期が短いためにかえって使いにくい面もあります。また、死亡例が出ているように、腎臓排泄型なので、腎機能が悪い場合は血中濃度が上がりすぎて重篤な出血をひきおこし易くなります。これらを考えると、今のところは、ワルファリンを使って凝固能をモニターしながら治療する方が良いと思われます。新規処方ランキングのトップということですが、ワルファリン治療が続けられないような例がそんなに多くあるのかと驚いています。

将来的には、腎機能が悪い場合でも使えるXa阻害系の経口抗凝固薬も、心房細動患者の脳卒中リスクに対して用いられるようになると思われます。どのような治療が主流になるのか、まだ良くわかりません。

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コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早う御座います。
    自分は動脈硬化(石灰化、アテローム)進展のためバイアスピリンを服用中、しかしこれが血小板に対し不可逆的に影響するためイザと言うときアウト、服用中止で速やかに回復する薬剤に常々変薬したいと思ってるんですが。
                    taniyan