T細胞の改変で末期の白血病患者が全快―「改変殺し屋T細胞」が標的がん細胞と結合すると増殖

T細胞の改変で末期の白血病患者が全快、米研究

以下は、記事の抜粋です。


患者本人のT細胞を遺伝的に改変してキラー細胞とする新たな白血病治療法で、末期の白血病患者3人のがん細胞が死滅または激減したとの研究結果が10日、Science Translational MedicineとNew England Journal of Medicineに同時発表された。

ペンシルベニア大の研究チームは、患者から採取したT細胞に遺伝子操作を施し、CD19たんぱく質を発現させる全細胞を攻撃するよう改変した。また、T細胞とがん細胞が結合した瞬間にT細胞の増殖を促す改変も行った。

この治療法を適用した3人の慢性リンパ球性白血病(CLL)患者のうち、1人は64歳男性で、血液と骨髄に3キロ分のがん細胞があった。治療後2週間はほぼ何の変化もなかったが、その後吐き気、悪寒、高熱を訴えるようになった。検査の結果、改変T細胞の数が急増しており、吐き気や熱はがん細胞の死滅時に現れる腫瘍崩壊症候群の症状だと分かった。治療開始から28日目までにがん細胞は死滅し、1年後の検査でもがん細胞は検出されなかった。

2人目の65歳男性でも同様の結果が出た。3人目の77歳男性でも患者の状態がかなり改善された。Carl June教授によると、3人とも改変T細胞の数が少なくとも1000倍に増えた。改変T細胞は1個あたり数千個のがん細胞を死滅させていた。

がんの再発をどれほどの期間抑えられるのかは不明だが、改変T細胞ががん細胞死滅後少なくとも1年は残存することに、研究者らは興奮している。次は、この治療法を小児患者2人とCD19陽性の成人患者少なくとも13人に試す予定だ。


NEJMの元論文のタイトルは、”Chimeric Antigen Receptor–Modified T Cells in Chronic Lymphoid Leukemia”です(論文をみる)。

遺伝子導入によって、T細胞の表面に任意の抗体を発現させ、新しい抗原特異性を持たせることが可能です。抗体の抗原認識領域とCD3-zeta鎖を1つのキメラタンパク質にしたキメラ抗原受容体を発現させると、内因性のT細胞受容体と同様、T細胞を活性化することはわかっていましたが、これまでのところ臨床的な効果は得られていませんでした。研究者らは、このキメラにCD137 (4-1BB) シグナル領域を追加すると、上記効果が持続することを前臨床in vivo実験で確認していました。

一方、がん細胞特異的な抗原というものは、多くのがんで不明なことが多いのですが、B細胞由来のがん細胞の場合にはCD19が魅力的な標的です。研究者らは、B細胞のがんであるCLLにおいて、抗CD19キメラ抗原受容体(CART19)を患者自身のT細胞に発現させるパイロット臨床試験を行いました。

NEJMに症例報告された1名の患者は、リツキシマブ(rituximab、CD20モノクロ抗体)とフルダラビンで治療されていましたが、徐々に反応性が悪くなり、打つ手が無くなった末にこの実験的治療を選んだようです。

成功のカギは、CD137 (4-1BB) シグナル領域のキメラタンパク質への追加だろうと研究者らは推測しています。CD137はT細胞増殖を刺激するので、これを導入することで受容体に抗原が結合すると改変T細胞の増殖が刺激され、この患者のように、投与量は少なかったのに改変T細胞が1000倍以上に増殖し、6ヵ月後もその存在が確認されました。無くなったB細胞が戻ってくるのかなどの疑問はありますが、他のがんへの応用も期待できそうで、非常に印象的な報告だと思います。

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