慢性便秘に対するリナクロチドに関する 2 つの無作為化試験

Two Randomized Trials of Linaclotide for Chronic Constipation
以下は、論文要約の抜粋です。


背景:リナクロチド(linaclotide)は、グアニル酸シクラーゼC受容体の低吸収性ペプチドアゴニストである。慢性便秘患者におけるリナクロチドの有効性と安全性を決定することを目的として2つの臨床試験を行った。

方法:慢性便秘患者1276例に対して、2用量の臨床試験をランダム化、多施設、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験を12週間行った。患者は、プラセボ、リナクロチド145μg、同290μgのいずれかに割り付けられ、1日1回12週間投与された。主要有効性エンドポイントは、完全な自発的排便(complete spontaneous bowel movements, CSBMs)が週3回以上あり、投与以前のCSBMsからの1回以上の増加が12週中9週以上で認められることとした。有害事象もモニターされた。

結果:2つの臨床試験において、主要エンドポイントの達成率は、リナクロチド145μg群ではそれぞれ21.2%と16.0%で、リナクロチド290μg群ではそれぞれ19.4%と21.3%であった。一方、プラセボ群ではそれぞれ3.3%と6.0%であった。すべての2次的エンドポイントにおける改善は、2つのリナクロチド群がプラセボ群よりも有意に大きかった。有害事象の発生率は、両リナクロチド群の4.2%で投与中止の理由となった下痢を除き、全群で同程度だった。

結論:2つの12週にわたる臨床試験において、リナクロチドは、慢性便秘患者の排便症状と腹部症状を有意に軽減した。慢性便秘に対するリナクロチドの潜在的な長期のリスクとベネフィットを評価するには、さらなる研究が必要である。


リナクロチドは、腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E. coli、ETEC )の耐熱性毒素(heat stable toxin, ST)の活性部分(59-72)の62番のleucineがtyrosineに代わっただけのアミノ酸14個からなるペプチドです。

ETECは途上国における乳幼児下痢症の最も重要な原因菌であり、先進国においてはこれらの国々への旅行者にみられる下痢症の主要な原因菌です。途上国において、ETEC下痢症はしばしば致死的で、幼若年齢層の死亡の重要な原因です。

正常の腸上皮では、guanylinとよばれるペプチドが、腸管内Na濃度の上昇によって産生・分泌されます。分泌されたペプチドはGC-Cを活性化し、腸上皮細胞内で産生されたcGMPは、Na+/H+ 交換を抑制し、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)を活性化します。その結果、小腸では、水、塩素、重炭酸塩が腸管へ分泌されます。また、大腸ではNaや水分の吸収が抑制されます。

STは、GC-Cを強く活性化することで、上記のメカニズムを亢進させ、下痢をひきおこします。リナクロチドもSTとまったく同じメカニズムで下痢様の現象をひきおこして便秘を治療するのだと思われます。論文に書かれているように、12週という比較的短い期間ではうまく行ったようですが、長期に使用した場合に効き目が落ちてくるのか?意外な副作用が出てくるのか?あたりが今後の課題になると思います。

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