Wntシグナル経路とDupuytren’s Disease(デュピュイトラン病)

Wnt Signaling and Dupuytren’s Disease

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:デュピュイトラン病は、手と指の良性線維腫症で、屈曲拘縮をもたらす。研究者らは、多くの遺伝的および環境的因子がこの病気の疾患感受性に影響を与えるという仮説を立て、病因を明らかにするために、疾患感受性遺伝子の同定を試みた。

方法と結果:オランダでのデュピュイトラン病の連鎖解析により、疾患感受性と連鎖する9個の遺伝子座位における11のSNPを同定した。9個の遺伝子のうち6個(WNT4、SFRP4、WNT2、RSP02、SULF1、WNT7B)がWntシグナル経路に関連していた。

結論:デュピュイトラン病の疾患感受性遺伝子を9つ同定した。その中6個の遺伝子がWntシグナル経路のタンパク質をコードしていた。この事実は、Wnt経路の異常がデュピュイトラン病における線維腫症形成のカギであることを示唆している。


デュピュイトラン拘縮は、一般的に認められる手の変形の1つで、発生率は男性の方が高く、45歳を過ぎると増加します。様々な浸透度で、常染色体優性遺伝を示します。手掌の腱膜が肥厚収縮して、環指と小指が伸ばせなくなる病気です。治療には、手術を行いますが、再発することも多いそうです(説明をみる)。

Wntは、マウス乳がんの原因遺伝子int-1の産物として同定され、ショウジョウバエの体節形成にかかわるWinglessとの相同性から名づけられた体軸形成、中枢神経発生、器官形成にかかわる糖タンパク質です。Wntシグナルはいろいろな疾患と関連していますが、がんとの関連が特に注目されています。Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の恒常的活性化が、家族性大腸腺腫症や大腸がんを引きおこすことはよく知られています。

デュピュイトラン病の初期には線維芽細胞の異常増殖が認められます。一方、Wntシグナル経路はがんや線維腫症において繊維芽細胞の増殖と分化を制御することが知られています。

これらのことから研究者らは、デュピュイトラン病の病因にWntシグナル経路が関与すると考えています。手の筋膜の線維芽細胞がWntシグナルの異状によって増殖し結節を形成するというのです。実際、デュピュイトラン病患者の線維芽細胞を培養するとβ-カテニンレベルが増えているという報告もあるそうです。

中年以降に発症するような良性疾患でも遺伝子との関連がある、しかも発がんとの関連が強いWntシグナルの異常というところに興味を持ちました。常染色体優性遺伝ということですので、おそらく弱いgain of function変異がWntシグナル経路遺伝子のどこかにあるのではないかと思われます。

デュピュイトラン拘縮(整形外科学会のサイトより)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする