化学療法に対する浸潤性乳癌の反応性と生存率をマイクロアレイを用いた遺伝子発現パターンで予測

A Genomic Predictor of Response and Survival Following Taxane-Anthracycline Chemotherapy for Invasive Breast Cancer

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:オーダーメード個別がん治療戦略のために、標準的ながん治療による生存率を高い確率で予想することは重要である。

目的:新たに浸潤性乳癌と診断された患者において、化学療法に対する反応性と生存率を予測する方法を開発する。

方法:2000年6月から2010年3月まで、ネオアジュバント(術前)化学療法のための遺伝学的予測法を開発する目的で、前向き多施設試験を行った。新しくHER2ネガティブ乳がんと診断され、taxane+anthracycline投薬(エストロゲン受容体ポジティブ(ER+)ならば内分泌治療を加える)を受ける310例の患者を対象とした。バイオプシー採取したがん組織の遺伝子発現マイクロアレイ解析を行い、ER状態別にパターン分類した。これに基づき、(1)内分泌治療への感受性、(2)化学療法耐性、(3)化学療法感受性を198例の患者について予測した。

結果:治療に感受性と予測された検証コホートの患者では病理学的良好反応率は56%で、遠隔無再発生存率は92%だった。このように、ER状態と遺伝子発現は化学療法後の生存率を高確率で予測した。

結論:ER状態、化学療法耐性予測、化学療法感受性予測、内分泌治療感受性予測を組み合わせた遺伝学的予測診断はtaxane+anthracycline化学療法による生存を高い確率で予測できる。


乳がんの化学療法には大きく分けて、ネオアジュバント(術前)とアジュバント(術後)の2つがあります。また、乳がんにはERやHER2などを含めていろいろな表現型がありますが、どの表現型のものでもネオアジュバント化学療法によって病理学的CR(pathological complete response、原発巣およびリンパ節転移巣などすべての癌細胞が壊死に陥っているか、または消失した場合)が認められる患者は、長期生存の確率が極めて高いとされています。

しかし、この病理学的CRを予測する分子診断法は今のところありません。本論文では、HER2ネガティブの乳がんについて、治療前のバイオプシーサンプルをマイクロアレイ解析することで、病理学的CRと遠隔生存率を予測しようとするものです。

マイクロアレイはAffymetrix社のものです。ER+とER-のそれぞれに対して、Genes for Early Relapse、Genes for Excellent Pathologic Response、Genes for Extensive Residual Diseaseとよばれる遺伝子セットの発現を調べます。

リンパ節転移(N)+でER+の場合はCandidate Probe setsとして235個、Final Probe setsとして33個の遺伝子発現レベル、N+ER-の場合はそれぞれ268個と27個の発現レベルを調べて早期再発予測(Predictive Signatures for Early Relapse)をします。リンパ節転移が無い場合は、病理学的良好反応予測(Excellent Pathologic Response)のために、ER+の場合はCandidate Probe setsとして209個、Final Probe setsとして39個、ER-の場合はそれぞれ244個と55個の遺伝子発現レベルを調べます。

それぞれの遺伝子についてみると、例えばASTN2(astrotactin 2)は、Genes for Early Relapse in ER-Positive Breast CancerとGenes for Excellent Pathologic Response in ER-Positive Breast Cancerの両方にリストされていますが、理論的背景はわかりません。

結果をみる限り、これまでのTMN分類や病理組織分類を組み合わせた標準的な臨床病理学的パラメーターに基づく予測よりもかなり正確なようです。がんの遺伝子検査としては、この報告のように複数の遺伝子の発現レベルを調べるものと複数の遺伝子・コピー数変異を調べるものがドンドン出てくるのではないかと思います。

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コメント

  1. magu より:

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    何気に気付き、目を疑いました。
    プログ更新時間の規則制。
    まさに拘りを感じました。