腸管出血性(Vero毒素産生)大腸菌の予防と治療

一次,二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き【改訂版】

O157やO111などの腸管出血性(Vero毒素産生)大腸菌についてのサイトです。以下は、その抜粋と追加です。詳しい情報を知りたい方は、元のサイトをご覧ください。


1 0157とはどのような菌か

0157は、腸管出血性大腸菌に属する。べロ毒素産生性大腸菌(Verotoxin produdng E coli;VTEC)とも呼ばれる。最大の特徴はベロ毒素を産生することである。べロ毒素は、べロ細胞(アフリカミドリザルの腎臓由来)に極く微量で致死的に働くことから付けられた名杯である。

0157は熱に弱く、75℃で1分間加熱すれば死滅する。しかし、低温に強く、家庭の冷凍庫では生き残ると考えられる。また、感染が成立する菌量は約100個といわれている。べロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌は0157が最も多いが、0157以外にも01、0111等の血清型の中の一部がべロ毒素を産生することが報告されている。

0157の感染は、飲食物を介する経口感染である。0157感染症は平成8年8月に伝染病予防法に基づく指定伝染病に指定された。これに伴い、0157感染症を診断した医師には、届出が求められることとなった。

2 0157感染症により、どのような症状が出現するか

0157感熱症では、全く症状がないものから軽い腹痛や下痢のみで終わるもの、さらには頻回の水様便、激しい腹痛、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし、時には死に至るものまで様々である。多くの湯合は、おおよそ3~5日の潜伏期をおいて発病する。さらに、激しい腹痛を伴い、まもなく著しい血便となることがある。

0157感染による有症者の約6~7%では、下痢などの初発症状発現の数日から2週間以内に、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome、HUS)または脳症などの重症合併症が発症する。

3 下痢症の診断はどのように行うか

下痢の症状があり、0157感染症と診断された時には、安静、水分の補給及び年齢・症状に応じた消化しやすい食事の摂取をすすめる。経口摂取がほとんど不可能な場合は輸液を行う。

腸管運動抑制性の止痢剤は、腸管内容物の停滞時間を延長し、毒素の吸収を助長する可能性があるので使用しない。強い腹痛に対する痛み止めは、ペンタゾシンの皮下注または筋注を慎重に行う。臭化プチルスコポラミン(プスコバン®など)は腸管運動を抑制するため、避けたほうがよい

4 抗菌剤治療をどのように考えるか

0157感染症による下痢症は、細菌感染症であり、抗菌剤を使用した群の中で早期没与された者ほどHUSの発症率が低かったとの結果が報告されている。

一方、これまでにST合剤等を使用した場合にHUSが悪化したという症例や抗菌剤の使用の有無により臨床経過に有意な差異がなかったという報告があることから、抗菌剤の使用に懐疑的な意見がある。また、「患者への抗菌剤の使用は、菌を破壊し毒素を放出させて症状を悪化させる」との懸念も指摘されている。(これについては、ランダム化二重盲検試験の結果が出るまでなんとも言えないでしょう。)

0157感染症と診断し、抗菌剤を使用する場合には、できるだけ速やかに経口投与を行う。これまでわが国においては、ホスホマイシンの投与が多く実施されている。ST合剤等は使用しない方がよい。(ホスホマイシンは静菌的な抗生物質なので、ベロ毒素が放出されないだろうという発想だと思いますがエビデンスは?)

抗菌剤を使用しても消化管症状が直ちには消失せず、HUS等の合併症が発症することがあり、症状が改善しても、その2~3日後に症状が急激に悪化することがある。

5 重症合併症をどのように予測し、早期発見し、対応するか

0157感染症の中で重症合併症(HUSや脳症)を起こしやすい条件として、①乳幼児と高齢者、②血便や腹痛の激しい症例、が挙げられている。

外来では血便や腹痛が激しくなければ、乏尿と浮腫に注意しながら末梢血検査、血液生化学検査、尿検査等を1~2日に1回程度行い、経過を観察する。血便や腹痛が激しいとき、あるいは上記の症状や異常検査所見が見られたときは入院しての治療が望ましい。

入院中は上記の検査を1日1回程度実施し、できるだけ早く検査結果を確認する。HUS発症を疑わせる所見や脳症の予兆がみられたときは、HUSや脳症に対応できる設備・機能を持つ医療期間こ転院させることが望ましい。


ベロ毒素について

O157やO111の腸管出血性大腸菌による症状は、すべてベロ毒素によっておこります。ベロ毒素は、分子量約3万のAサブユニット1個と5個のBサブユニット(分子量約4000-7000)からなる蛋白質です。Bサブユニットで、細胞膜の糖脂質(globotrioyl ceramide:Gb3)に結合し、細胞内に取り込まれて分解され、Aサブユニットが、60Sリボゾームと結合して、蛋白合成を阻害し、アポトーシスを起こすと考えられています。この作用機序は、赤痢菌の志賀毒素とほぼ同じです。

ベロ毒素受容体であるGb3の量は、組織によって異なり、Gb3の多い組織が、ベロ毒素で障害を受けやすいとされています。例えば、Gb3を発現した糸球体血管内皮細胞はベロ毒素に対する感受性が高い。

ベロ毒素は、腸管血管内皮細胞を障害し、腸管粘膜のびらんと腸管出血を起こします。出血は、抗凝固因子の発現が低下し、線溶系因子の活性が低下し、微小血栓形成が起きるためだと考えられています。さらに進むと、溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全などのHUSが起きるとされています。

脳症の発症機序としては、ベロ毒素による脳血流減少による間接障害とGb3を持つ神経細胞組織の直接障害とが考えられています。

その他

牛はO157に感染してもまったく無症状です。そのため、家畜伝染病に指定されていません。感染が確認された牛の肉は、「加熱処理肉」として業者に販売され、ビーフジャーキーなどの食品として流通しています。牛の保菌率は報告によってかなり違います(3.6~48.9%)。

ヒトでも成人男性は、比較的O157耐性で、感染しても無症状のことが多いそうです。今回の死亡例もすべて小児と女性です。このように種や性で感受性に大きな差がある理由を知りたいと思ったのですが、調べてもわかりませんでした。また、他の多くの細菌性食中毒では原因菌を100万個単位で摂取しないと発症しませんが、上記のようにO157は100個(報告によっては50個というのもある)というホンの少量で発症します。今回死亡した小児も父親の話によると一口しか食べていないそうです。

肝臓は腸管からの血液が直で流入する臓器ですので、感染した牛を屠殺した時にO157が付着する可能性が筋肉よりもはるかに高いそうです。

以上を総合すると、生の牛レバーやユッケは、大人のオトコの食べ物のような気がします。ユッケを食べないと焼肉屋に行った気がしないと仰る肉食系の女性もおられるようですが、私は75℃で1分間加熱すれば死滅するという方を選びます。

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コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早うございます。
    何時も他では得られない有益な情報有難う御座います。
    0-111だけではないでしょうけど、食品衛生には十分注意してまいります。
                     taniyan