成長ホルモン受容体欠損は、ヒトの加齢促進シグナル伝達、がん、および糖尿病の大幅な減少と関連する

成長ホルモン抑制が予防の鍵か、小人症の人々は糖尿病と癌の発生率が極端に低い

以下は、記事の抜粋です。


成長ホルモン受容体の異常による遺伝性の小人症の一種「ラロン型低身長症(成長ホルモン不応症)」の家系を対象とした22年間にわたる調査により、成長ホルモンが機能せず背が伸びなかった低身長の人々では、平均的な身長の血縁者と比べ、糖尿病と癌の発生率が極端に低いことが明らかになりました。

アンデス山脈中腹、エクアドルのある村に住む人々は、スペイン系ユダヤ人の子孫が多く、ラロン型低身長症の家系が集中していることが知られています。

ラロン型低身長症は常染色体劣性遺伝で、患者では成長ホルモンは正常に分泌されるものの、成長ホルモン受容体遺伝子の変異により受容体が機能を果たさず、成長ホルモンにより分泌が促されるインスリン様成長因子1(IGF-1)が欠乏するため、身長が4フィート(120cm)程度にまでにしか伸びません。

南カリフォルニア大学の細胞生物学者Valter Longo博士と、キト在住のエクアドル人の内分泌学者Jaime Guevara-Aguirre博士らは、このアンデスの村のラロン型低身長症患者99名と、その血縁者で普通の身長の1600名(キャリア含む)を対象とした22年間にわたる調査で、低身長症患者では糖尿病や癌になる人が劇的に少ないことを発見しました。論文はScience Translational Medicine誌に発表されています。

小人症でない1600名では22年間の調査期間中に17%が癌と診断されたのに対し、小人症の99名のうち22年間で発癌したのは1名のみでした。糖尿病については小人症でない1600名ではエクアドルの人口全体での発症率と同じ5%程度だったのですが、小人症の99名では22年間で1人も糖尿病にはならなかったそうです。

また、調査協力者の99人とは別に、小人症の人々53名の詳細な死因の記録を調査した結果、癌と糖尿病に結びつけられる死は1件もなかったそうです。99名の協力者のうち調査期間中に亡くなったのは9名で、この合計62名の死因を総合すると、事故や飲酒関連の死因、けいれん性疾患が多かったそうです。


元論文のタイトルは、”Growth Hormone Receptor Deficiency Is Associated with a Major Reduction in Pro-Aging Signaling, Cancer, and Diabetes in Humans”です(論文をみる)。USC Newsにも掲載されています。

研究者らは、インビトロの実験結果から、がんが少ない原因は血清中にあると考えているようです。即ち、ラロン型低身長症患者血清は、培養ヒト乳腺上皮細胞の過酸化水素処理によるDNA切断は減少させるがアポトーシスを増加させること、さらに同血清で細胞を処理するとRAS、Aキナーゼ、TORの発現を低下させ、SOD2の発現を上昇させることを示しました。このような変化は、モデル生物の寿命延長に関連しているそうです。

研究者らはさらに、患者血清中のインスリン濃度がコントロールの約1/3であり、患者のインスリンに対する抵抗性もコントロールの約1/3である(よく反応する)ことも示しました。

しかし、この研究から「将来的には薬物や食事法により成長ホルモンを抑制することで癌と糖尿病を予防できるようになるのでは、と期待されています。」という結論にはならないと思います。

加齢とともに成長ホルモンの分泌は低下しますので、異常に高いヒトは正常レベルまで下げれば発がんなどを抑制できるし、正常人が成長ホルモンを必要以上に摂取することは発がんにつながる可能性がありますが、正常値以下に下げる意味は疑問です。実際、ラロン型低身長症患者の平均寿命はコントロールと同程度だそうです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. taniyan より:

    SECRET: 0
    PASS:
    tak先生
    難しい記事多いですがなんとか読ませて頂いてます。
    生物の寿命なんて自然に任せるのが最適。
    無理に仕組みをいじって延命しようなんて所詮無理なんでしょうね。
    自然に抵抗しようなんて考えるのは人間はアホなのかも。
               taniyan