転移性トリプルネガティブ乳癌に対するイニパリブと化学療法の併用、「合成致死」について

Iniparib plus Chemotherapy in Metastatic Triple-Negative Breast Cancer

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:トリプルネガティブ乳癌は、DNA修復機能に固有の障害を持っているので、poly(adenosine diphosphate–ribose) polymerase (PARP)阻害に基づく治療対象として妥当である。

方法:転移性トリプルネガティブ乳癌患者を、ゲムシタビン+カルボプラチンにPARP阻害活性をもつイニパリブ(iniparib)を追加投与する群としない群にわけて有効性と安全性を比較する非盲検第2相臨床試験を行った。主要エンドポイントは、臨床的ベネフィット率(完全or部分寛解率と6ヵ月以上の安定状態の率の合計)と安全性とした。追加エンドポイントは、客観的奏効率、無増悪生存期間、全生存期間などとした。

結果:ゲムシタビン+カルボプラチンにイニパリブを追加することにより、臨床的ベネフィット率は34%から56%に改善し、寛解率は32%から52%に改善した。無増悪生存期間中央値は3.6ヵ月から 5.9 ヵ月に延長し、全生存期間中央値は7.7ヵ月から12.3ヵ月に延長した。2群間で副作用の発現率に有意差は認められなかった。

結論:転移性トリプルネガティブ乳癌患者に対する化学療法にイニパリブを追加することで、毒性を増やさずに臨床的ベネフィットと生存期間を改善した。これらに基づき、全生存期間と無増悪生存期間を評価するために、第3相試験が行われている。


乳がん細胞の増殖に関係する3つの因子として、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の3つが知られています。これらの発現状況に応じて、ホルモン療法や分子標的療法などが選択されています。一方、これらとは関係なく乳がんが発生する場合があります。それが、「トリプルネガティブ(Triple Negative, TN)」と呼ばれるタイプの乳がんです。

TN乳がんは、明白な標的分子がなく、一般に予後が悪いとされてきました。しかし最近、TN乳がんを対象とした新しい分子標的治療薬として、PARP1阻害剤が注目されています。

抗癌剤や放射線によって損傷を受けたDNAを修復する機序として、相同組換えと塩基切断修復という2つのメカニズムが働いており、前者にはBRCAが、後者にはPARP1が主に関与しています。

また、TN乳がんの表現型と遺伝性BRCA変異乳がんの表現型が良く似ていることが知られています。これは、TN乳がんではBRCA遺伝子のプロモーター領域のメチル化などによりBRCAの発現が低下し、DNAの相同組換え修復が阻害されているからと考えられています。これらのがん細胞では、PARP1が過剰発現していることも報告されています。

これらの細胞に対してカルボプラチンなどのプラチナ製剤等によりDNAの損傷を引き起こし、同時にPARP1活性を阻害するイニパリブなどの薬剤を投与すると、細胞障害性とアポトーシスが高まることが期待されます。野生細胞ではPARP1を阻害しても、BRCAによる相同組換え機能が正常なのでDNAが修復されるが、BRCA変異がんやBRCA発現が低下しているTN乳がんではDNA修復機能が2つとも障害されるので、アポトーシスに至る可能性が高いという理屈です。

このようなプロセスを「合成致死(synthetic lethality)」とよぶそうです。DNA修復のような重要な細胞機能を、2つの独立したメカニズムが支えていることが合成致死が起きる条件です。酵母では、非常に多くの合成致死遺伝子の組み合わせが明らかにされています。今後はヒトでも抗がん薬の標的として、合成致死遺伝子の組み合わせが精力的に研究されると思われます。

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コメント

  1. 日の丸 より:

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    強い痒みがあり気持ち悪い、乳癌は厄介な病気です。放射線量が増えた事により乳癌発生率が今後益々増えるそうです。民主党や公明党は癌患者を作るテロ政党、憎しみが日に日に募ります。解散総選挙を早くやるべき! 元北朝鮮拉致実行犯市民の党の菅直人!