酒を飲みたくなったら薬を飲む――ナルメフェンによる大量飲酒者のランダム化二重盲検臨床試験

飲みながら治す依存症 世界初の新薬、欧州で臨床段階
以下は、記事の抜粋です。


アルコール依存症の患者の飲酒衝動を抑える世界初の薬が、欧州で臨床段階に入っており、早ければ2012年にも承認される可能性がある。
注目の薬は、デンマークの製薬会社ルンドベックの「ナルメフェン」。アルコール依存症の治療薬が承認されるのは、欧州では少なくとも15年ぶりとなる。

◆摂取量減らす効果

米アルコール中毒者更生会などが実施している従来の治療プログラムでは、生涯にわたる断酒が不可欠とされている。これとは対照的にナルメフェンは、飲酒をやめることではなく、患者のアルコール摂取量を減らすことを目的に開発されている。

米テキサス大学のハリス氏は「依存症の治療上の大きな問題は、患者の多くが禁酒という目標を受け入れたくないために、治療に関心を示さないこと」と指摘。同氏は、ナルメフェンを用いたアプローチにより、患者に治療への躊躇をさせず、積極的に取り組ませることを生むだろうとみている。

ナルメフェンはすでに市販されているアルコール依存症治療薬の「ナルトレキソン」とよく似たはたらきをするが、より効能が高く、その持続時間も長いという。

「アルコール中毒症 臨床と実験研究」で2007年に掲載された研究報告によると、ナルメフェンを服用したフィンランド人の男性と女性を対象とした治験では、飲酒量の多かった日数が服用前から45%減少した。プラセボを服用した対照群では3分の1の減少にとどまった。

ルンドベックの治験に携わるアルホ氏は「ナルメフェンを服用すれば、少しずつアルコールの摂取量を減らすことができるため、患者はアルコール問題を制御することができるようになる。切望されている薬だ」と話す。

◆飲む前に服用する

ルンドベック社によればナルメフェンは医師から必要に応じて処方され、1杯目を飲む前に服用することで効果が期待できる。。


元論文のタイトルは、”Targeted nalmefene with simple medical management in the treatment of heavy drinkers: a randomized double-blind placebo-controlled multicenter study.”です(論文をみる)。

本臨床試験の方法と結果をもう少し詳しく紹介します。被験者は403名(男328、女75)で、酒が飲みたいと思ったら薬物を服用するという方法で試験が行われました。

試験前では、12週あたりの大酒を飲む日数(HDD, heavy drinking days)はナルメフェン群で15.5日(SD 6.9)、プラセボ群で16.2日(SD 6.9)でした。治療期間中のHDDはナルメフェン群が8.6-9.3、プラセボ群が10.6-12.0でした。また、肝臓の機能悪化を反映する血清ALTおよびγ-GTP値もナルメフェン群で低下していました。これらの結果から、ナルメフェンは有効であると結論されています。

記事では、ナルトレキソンが市販されているように書かれていますが、これはアメリカの話で、日本では承認されていません。ナルメフェンもナルトレキソンもオピオイド受容体というモルヒネが結合する受容体の競合的拮抗薬です。

これらの薬物がアルコール依存に対して有効であることはわかっていましたが、どのような投与法がベストであるかの結論は出ていませんでした。この臨床試験は、薬を毎日定期的に飲むのではなく、酒を飲みたくなったら薬を飲むという簡便で高いコンプライアンスが期待される方法を試したものです。

中枢オピオイド受容体におけるナルメフェンの半減期は約29時間で、服用後5日間は飲酒行動を抑制することが知られていますので、このような投与法が可能だと思われます。

ナルトレキソンは、喫煙習慣治療や性犯罪防止などへの使用も検討されています。アメリカでは1994年に承認されていますが、日本では未承認です。以前、関連記事で紹介した肥満治療薬の配合剤Contrave®の1成分でもあります。こんなところにもドラッグ・ラグがありました。

関連記事
Contrave®が第3相臨床試験でFDAの肥満治療基準を達成

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする