京大、全寮制の大学院新設へ5年一貫でリーダー育成―「博士課程教育リーディングプログラム」

京大、全寮制の大学院新設へ 5年一貫でリーダー育成

以下は、記事の抜粋です。


専門性と幅広い教養を備えた次世代リーダーの育成を目指し、京都大は全寮制で5年一貫教育の「学寮型大学院」を新設する方針を固めた。2012年4月のスタートを目指し、国際競争力強化と人材育成を目指す文部科学省の資金支援制度「リーディング大学院」に応募する予定だ。

京大によると、1、2年目は通常の大学院と同じく学位論文の研究に専念。3年目は「法律政治」「医薬生命」「芸術」など8分野の「高度必修科目」で幅広い教養を積む。4年目は海外の大学や国際機関に留学、5年目にはインターンシップにも取り組む。現場で経験を積むことで、コミュニケーション能力を高めるのが狙いだ。

教員は京大のほか、企業や官公庁から招く。授業はすべて英語で行う。定員は1学年16~20人で、京都大の吉田キャンパス周辺に寮を設ける。1人当たり年間約300万円の奨学金を与えるという。

京大によると、経済界などから「幅広い教養やリーダーシップを備えた人材を育成してほしい」という要望が出ていたという。


記事にある「国際競争力強化と人材育成を目指す文部科学省の資金支援制度『リーディング大学院』」というのは、「博士課程教育リーディングプログラム」のことだと思われます。このプログラムは、ポストGCOEだと漠然と考えていたのですが、上の記事をみてこの考えは間違っているのかもしれないと思い、少し調べてみました。

「政策コンテスト」資料によると、以下のように書かれています(資料をみる)。

◇世界を牽引するリーダーを養成する世界トップレベルの大学院形成
博士課程教育リーディングプログラム  52億円(20拠点)

○5年一貫した国際標準の博士課程教育の実施
(人文・社会科学系を含めた、分野の枠を超えたアプローチ重視)
○産業界等と連携し、卒業後のキャリアパスを確立
○国内外の優秀な教員・学生を結集し、国際ネットワークの中で、学生の国際性を涵養

また、パブリックコメントのヒアリング資料によると、20拠点は以下のように分類されています(資料をみる)。

タイプ1:オールラウンド型(大学の叡智を結集した文理統合型の学位プログラムに基づく博士課程教育を実施)を2拠点(1拠点あたり3億円)
タイプ2:複合領域型(複数領域を横断した学位プログラムに基づく博士課程教育を実施)を12拠点(1拠点あたり3億円)
タイプ3:オンリーワン型(ユニークな博士課程教育を学位プログラムとして強化)を6拠点(1拠点あたり1.5億円)

記事にある京大案は、恥ずかしいほど文部科学省の規格に準拠していることがわかります。タイプ1の3億円狙いでしょう。大学院生を寮に閉じ込めてどうするのかなどと思いますが、これ以上のコメントはやめておきます。

さて、クリスマスイブに閣議決定された平成23年度予算案では、52億円から39億円に減額されました。拠点あたりの予算を減らさないとすると、15拠点ぐらいに減ることになります。グローバルCOEの初年度(平成19年)予算は63拠点で158億円でしたので、かなり厳しいレースが予想されます。

いずれにしても、「博士課程教育リーディングプログラム=ポストGCOE」ではなさそうです。参考のため、以下に行政刷新会議による「事業仕分け」の「リーディングプログラム」に対する評価コメントを紹介しておきます(コメントをみる)。

● 内容が、従来のグローバルCOEプログラムの一部を外出ししたものに過ぎない。ポスドクの生活支援、就業支援の側面が強く、「リーディングプログラム」にふさわしい事業内容と思われない。目的に即した内容でなければむしろ予算計上を見送るべき。
● 本質的な拠点づくりのビジョンが明確に示されるまで事業化すべきでない。
● 不要である。この種の制度設計は、もっときちんと議論すべき。あまりに安易な計画である。
● まず、グローバルCOEの事業で、現実に日本のトップ大学の競争力はついていない。このことを無視して、単に後継事業を認めることはできない。そして、説明によれば、本事業が、前事業と異なり、成果が上がるという点について、説得力のある説明はなされなかった。“専攻”や“大学”に金を出すという手法はやめるべき。優秀な研究者をしっかり評価して、個人に金を出す方法にすべき。
● 21世紀COE、グローバルCOEプログラムが平成14年度からスタートして以来9年が経過したが、目標に対する成果が不十分なままに反省なく継続してきたことは問題である。リーディング大学院プログラムは、グローバルCOEが専攻単位で資金を入れるのに対し、より広い研究科単位で資金を入れるので、効果がより拡散してしまい、効率的な資金の使い方とは言えない。よって、最も効率的な学生自身に直接奨学金を給付することにより、学生自身が活気を帯びる仕組みに変更する。
● 制度的改革が先行、せめて同時でなければならない。
● 大学院教育を構造的に改革しない限り、大学院において当事業が求めるような人材は育たないのではないか。
● 研究者志望者への援助制度は、長期間安定している必要がある。既存の学振研究員等の拡充で対応すべし。
● 国立大学運営費交付金(特別経費)、私学助成の中での別メニューとの違いを明確にできていない。重複しているのではないか。
● 目的を明確化し、グローバルCOEと同様のばらまきとなる懸念。選択と集中を適切に行い、数を絞って事業を実施すべき。
● 選択と集中の観点で意義あるものになるかどうか

ご指摘はごもっともだと思いますが、誰かが言っていたように、運営費交付金を減額され続けている国立大学は、ゼネコンなどの企業が『公共事業』の受注に熱中するように、まるで薬物中毒のように『競争的資金』獲得に走らざるを得ません。今は「GCOE薬」が切れかけていて、次の「リーディング大学院薬」を求めていますが、これも7年で切れます。「百年の計」からほど遠い日本の人材育成です。

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