パラオキソナーゼ-1(PON1)は、クロピドクレルによる臨床効果の主要な決定因子である

Paraoxonase-1 is a major determinant of clopidogrel efficacy

以下は、論文要約の抜粋です。


抗血小板薬クロピドクレルは、その活性代謝産物への変換が個々の患者によって一定しないために、臨床的有効性が十分に発揮されていなかった。また、クロピドクレル治療の臨床効果の個人による違いは、遺伝的素因によるとされてきたが、その遺伝子の特定やクロピドクレルの活性化の分子メカニズムは不明のままだった。

インビトロの代謝プロファイル技術によって、我々はクロピドクレル活性化において最も重要な酵素としてパラオキソナーゼ-1(paraoxonase-1, PON1)を同定し、さらにそのQ192Rという遺伝子多型が活性化型への変換効率の決定因子であることを明らかにした。

我々は、ステント留置とクロピドグレル投与を受けている冠動脈疾患患者で、PON1 Q192R遺伝子多型の臨床的意義を調べた。その結果、PON1 QQ192ホモの患者は、RR192ホモの患者よりもステント血栓形成のリスクが高く、血清中のPON1活性とクロピドクレル活性代謝産物が低く、血小板活性の阻害も不十分であることが示された。


少し前までは、関連記事の3~5にあるように、クロピドクレルはCYP2C19により活性化型に代謝されて作用すると考えられていたので、CYP2C19の遺伝子多型やCYP2C19によって代謝されるオメプラゾールなどとの薬物相互作用が重要とされてきました。そのため、PPIと併用する場合は、CYP2C19の影響が最も少ないとされるラベプラゾール(商品名:パリエット)を使うのが無難だと考えていました。

しかし本年9月、関連記事2にあるように、クロピドクレルはCYP2C19の機能欠失変異の有無に関係なく効果を示すことが報告されました。さらに、関連記事1に紹介した本年11月の論文では、アスピリンとクロピドグレルとの2剤併用という条件では、心血管イベントはオメプラゾールの投与によって影響されないことが示されました。

これらの最近の結果から、クロピドクレル投与において、CYP2C19の遺伝子多型やPPIsとの相互作用は、あまり心配しなくても良いかもしれないと思っていました。しかし、まさかクロピドクレルの活性化におけるCYP2C19の重要性が否定され、新しい活性化メカニズムが示されるとは思っていませんでした。

パラオキソナーゼ-1(PON1)は、肝臓で生合成され血中ではHDLと結合しているエステラーゼです。本論文では、クロピドクレル活性化の第1ステップは、チトクロームP450による2-oxoクロピドクレルへの酸化、第2ステップは、PON1によるチオール活性化物への加水分解であることが示されました。そしてこの第2ステップが律速段階であることも示されました。

本論文によると、PON1 Q192R遺伝子多型は、クロピドクレル投与による血小板凝集抑制の個人差を72.5%説明できるそうです。今後は、クロピドクレル投与におけるPON1遺伝子多型の決定や血中PON1活性の測定の意義が問題になると思います。

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