ヒト線維芽細胞を多能血液前駆細胞に直接変換

iPS細胞使わずに「血液細胞」作製成功

以下は、記事の抜粋です。


たった一つの遺伝子を人間の皮膚細胞に送り込むだけで、血液細胞の前段階である細胞に変えることに、カナダ・マクマスター大の研究チームが成功した。

今回の成果はiPS細胞を使わずに血液細胞を簡単に作る技術につながる可能性がある。11月8日のネイチャー電子版に発表した。

研究チームは、iPS細胞を作る時に使う遺伝子のうち、「OCT4」という遺伝子のみを皮膚細胞に導入した。その結果、血液細胞になる寸前の「血液前駆細胞」に変化した。この細胞に変化を促す特殊なたんぱく質を加えて培養し、白血球や赤血球などの血液細胞になることも確認した。


元論文のタイトルは、”Direct conversion of human fibroblasts to multilineage blood progenitors”です(論文をみる)。

関連記事に紹介しましたが、線維芽細胞から心筋細胞や神経細胞を直接再プログラミングによって作成することは既に報告されています。今回の論文は、それが血液前駆細胞に代わっただけのような印象もありますが、そうではないようです。

まず、これまでの細胞はマウス由来の線維芽細胞でしたが、今回はヒト由来の線維芽細胞です。さらにもう1つ、これまでES細胞やiPS細胞では解決できなかった問題が解決されました。それは、ヘモグロビンの問題です。

ヘモグロビンには胎児型のヘモグロビン(HbF)と成人型のヘモグロビン(HbA)があります。HbFを含む赤血球は、HbFが高い酸素親和性をもつため、母体内という低酸素環境には適していますが、成人輸血などには不向きです。

HbFとHbAは、2つの異なる遺伝子によってコードされ、その発現が出生を境に切り替わります。出生直後はHbFが全ヘモグロビンの80%以上を占めますが、その後徐々に減少し、5歳くらいですべてHbAになります。

ESやiPSでは血球系の細胞が誘導されても、産生されるヘモグロビンがすべてHbFだったのです。今回の直接誘導で得られた細胞では、HbAが産生されたそうです。ヒトの細胞である点とあわせて、臨床への応用が近づいた感があります。

しかし、OCT4を用いたこの論文のやり方では、好中球や血小板などの骨髄球系の細胞や赤血球系の細胞は誘導できるのにリンパ球系の細胞はできないそうです。なかなか奥が深いですね。

OCT4 (one of Yamanaka factors)で誘導された赤血球

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