関節リウマチに対する経口脾臓チロシンキナーゼ(Syk)阻害薬

An Oral Spleen Tyrosine Kinase (Syk) Inhibitor for Rheumatoid Arthritis

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:脾臓チロシンキナーゼ(Syk)は、免疫シグナルの重要なモジュレーターである。この第2相臨床試験の目的は、メトトレキサート治療にもかかわらず活動性の関節リウマチ(RA)を有する患者において、経口Syk阻害薬R788の有効性と安全性を評価することである。

方法:長期のメトトレキサート治療にもかかわらず活動性RAを有する患者457名を、6ヶ月の2重盲検プラセボ対照臨床試験に参加させた。主要転帰は、6ヵ月の時点での米国リウマチ学会(ACR)20改善率(間接の圧痛と腫脹数が20%以上減少し、他の5項目のうち3項目以上において20%以上の改善を示す)とした。

結果:R788の100mg1日2回投与群と150mg1日1回投与群は、6ヵ月の時点でプラセボ群よりも有意に優れていた(ACR20改善率はそれぞれ67%と57%、プラセボ群は35%)。50%以上の改善を示すACR50についても、有意に優れていた(43%と32%対19%)、そしてACR70についても有意に優れていた(28%と14%対10%)。治療開始後第1週の終わりまでに、臨床的に有意な効果が認められた。副作用は、下痢(19%)、上気道感染(14%%)、好中球減少(6%)などが認められた。1ヵ月目にR788群で平均約3mmHgの収縮期血圧上昇が認められ、降圧治療の開始または変更を要した患者は23%だった。

結論:この第2相臨床試験において、Syk阻害薬はRA患者の疾患活動性を低下させたが、下痢、高血圧、好中球減少などの副作用が認められた。RA患者におけるSyk阻害治療の安全性と有効性をさらに確かめるためには、さらに研究あるいは臨床試験が必要である。


Sykは1991年、福井医大において中村、山村らによって発見された非受容体型チロシンキナーゼです(論文をみる)。血液細胞をはじめ様々な組織に発現しています。

Sykは、IgE受容体であるFcεRIを介する肥満細胞の脱顆粒および好酸球の活性化において、重要な役割を果たしているとが良く知られています(下図左)。

また、SykはRA患者の関節滑膜に存在し、TNFα刺激によって滑膜細胞からサイトカインやメタロプロテイナーゼが産生されるのに重要な役割を果たしています。げっ歯類モデルでのコラーゲン誘発関節炎において、強力かつ選択的なSyk阻害薬R406のプロドラッグR788は、強力な抗炎症効果を示しました(論文をみる)。これらの結果は、Syk阻害がRA治療において有効である可能性を示唆しています。

本論文の臨床試験に先立って行われた189名を対象とした2週間の第1相臨床試験でも、RA活動性の減少や血中IL6値の低下などの希望的な結果が得られた(論文をみる)ので、より大きな集団で長期にわたる第2相臨床試験が行われました。

記事に書かれているように、明らかにR788によると思われるいくつかの副作用があります。また、論文によると、Sykは腫瘍発現と転移を抑圧するとされていますので、Sykを阻害することで発がんや転移の促進などの可能性もあります。これらの問題が解決し、Syk阻害薬がRA治療に貢献することを祈っています。

イムノグロブリン受容体やインテグリンの下流で働くSyk(nature review>より)

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