乳がん:早期発見キャンペーンの不都合な真実

神戸ポートタワーもピンク色 「ピンクリボン」始まる
以下は、記事の抜粋です。


乳がんの早期発見、早期診断、早期治療の大切さを訴える「ピンクリボンフェスティバル2010」が10月1日、神戸、東京、仙台の全国3都市で始まった。

神戸市ではJR三ノ宮駅周辺で午後4時ごろから、乳がんの患者会である「あけぼの兵庫」の会員ら約100人が啓発チラシを通行人に配った。メリケンパーク周辺では日没後、午後6時から神戸ポートタワーやホテルオークラ神戸がシンボルカラーのピンク色に染まった。いつもと違う波止場の風景に、携帯電話やカメラで撮影する人たちの姿が見られた。


日本の新聞は、「ピンクリボン」に対して上のような肯定的な報道ばかりですが、Los Angeles Timesは、以下のような否定的な記事を掲載しています。


Breast Cancer: The downside of awareness campaigns
(乳がん:早期発見キャンペーンの不都合な真実)
以下は、記事の抜粋です。


10月になると国中でピンクリボンが溢れ、乳がんの早期発見キャンペーンが行われている。しかし、一部の専門家は、このようなキャンペーンが本当に乳がんの女性を助けているのかを疑っている。

キャンペーンは1990年に始まり、1991年には1日117人が乳がんで死亡したのが、今は110人に減った・・・26年間のキャンペーンで、2%しか減少していない。多くの人々はこのような事実を知らない。

また、この早期発見キャンペーンは、医学の進歩から遅れている。キャンペーンは、一貫してマンモグラフィーによる検診の重要性を強調しているが、NEJMに先月掲載された論文では、一つの命がマンモグラフィーで救われる度に、5-15名の女性が不要な診断と治療を受けているという(論文をみる)。

また、キャンペーンには検診で命が救われたという女性の話がよく出てくるが、乳がん治療の良好な予後を考えれば、多くの乳がん患者は初めから生命の危機になどさらされていない。

問題は、現状の過剰診断や過剰治療がほとんど問題にされておらず、キャンペーンのスポンサーの利益相反なども見過ごされていることだ。キャンペーンの結果、治療や検査が増えれば、製薬会社や検査会社の利益が増えるのは当然だ。キャンペーンスポンサーの多くはこのような企業だ。

以上のように、長年のピンクリボン運動にもかかわらず、乳がんによる死亡はほんの少ししか減少していない。早期発見キャンペーンのために、多くの女性が不必要な治療を受けているかもしれない。


あえて「ピンクリボン月間」にこのような記事を掲載したことに感心しました。記事には、キャンペーン支持者の意見もいくつか掲載されていましたので、公平な記事だと思いました。これらの意見を読みたい方は元記事をご覧ください。

上の記事の内容は、日本の専門家の間でも議論されていることですが、マスコミはキャンペーン支持一色です。毎日新聞などは、「10月は乳がんのマンモグラフィー検診の重要性を訴える『ピンクリボン月間』」などと書いています(記事をみる)。TBSも「20‐30代女性に限定した乳がん検診」というわけのわからないことをやっていました。

早期発見・早期診断・早期治療が、過剰診断・過剰治療につながる恐れは、前立腺がんでも指摘されています。がんに関する「常識」を捨てる必要がありそうです。

Pink Ribbon Blues: How Breast Cancer Culture Undermines Women's Health
Gayle A. Sulik
Oxford University Press, USA
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