たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか

研ぎ澄まされた感性、歌人の河野裕子さん死去

以下は、記事の抜粋です。


みずみずしい感性で女性としての生を力強く表現した短歌で知られる歌人、河野裕子(かわの・ゆうこ)さんが8月12日、乳がんのため亡くなった。64歳。葬儀は密葬で行う。喪主は京都産業大学教授で歌人の夫、永田和宏さん。

熊本県出身。昭和44年、京都女子大在学中に「桜花の記憶」で角川短歌賞を受賞。47年に最初の歌集「森のやうに獣のやうに」を出し、同年、学生時代に知り合った永田さんと結婚。その後、妊娠、出産、子育て、家族のことなど、身近な題材を研ぎ澄まされた感性で表現した。

昭和52年、「ひるがほ」で現代歌人協会賞、平成14年、「歩く」で紫式部文学賞、若山牧水賞、21年、「母系」で斎藤茂吉短歌文学賞、迢空賞を受賞。21年からは宮中歌会始選者をつとめた。


永田和宏さんが短歌をやっていることは知っていました。教育テレビの短歌の番組で、永田さんが、「歌は作者の意図とは関係のない独立した命を持っている」という意味のことを言ったのを聞いて感動し、そのことを後で永田さんに言ったら、「俺、そんなこと言ったかなあ」と言われたのを良く覚えています。

永田さんの奥さんが、永田さんよりもすごい歌人であることは伝え聞いていましたが、先日河野さんの訃報を知るまで彼女の歌をみたことはありませんでした。以下に、河野さんの歌をいくつかを紹介します。


寝ぐせつきしあなたの髪を風が吹くいちめんにあかるい街をゆくとき
逆立ちしておまへがおれを眺めてた たった一度きりのあの夏のこと
坂こえて来たる夕雲ふかぶかと野の花いろの光ふくみて
たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか
病むまへの身体が欲しい 雨あがりの土の匂ひしてゐた女のからだ
かうなれば体力温存猫二匹身体に添はせ昼より眠る
わたしより不安な不安な君なれど苦しむ体はわたしの体
俺よりも先に死ぬなと言ひながら疲れて眠れり靴下はいたまま


「寝ぐせつきしあなたの髪」というところは、ボサボサの永田さんの髪を思い出して思わず笑ってしまいました。若い頃だったとしても、あの永田さんが逆立ちできたのだろうか?などとも思いました。

これらの歌をみて、奥さんの方がすごいというのは正しいと思いました。あるとき永田さんに、「久野さんの研究は綺麗だ」と言われたことがあります。これもご本人はもうお忘れかもしれませんが、今後も心がけていきたいと思っています。

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