転移性メラノーマの変異により活性化したBRAFの阻害

Inhibition of Mutated, Activated BRAF in Metastatic Melanoma

以下は、論文の要約です。


背景:多くのメラノーマでセリン・スレオニン・タンパク質キナーゼである B-RAF(BRAF)をコードする遺伝子の体細胞変異が同定されたので、変異BRAFを分子標的とする薬物治療を試行した。

方法:変異BRAFの経口阻害薬である PLX4032(別名RG7204)の多施設第1相用量漸増臨床試験を行い、その後続いて、有害作用をおこさず投与できる最大用量(第2相の推奨用量)を含む延長相試験を行った。患者は疾患が進行するまでPLX4032を1日2回投与された。全患者に対して、薬物動態解析と腫瘍反応評価を行った。治療前と治療中にBRAF阻害を確認するために、一部の患者において腫瘍生検を行った。

結果:計55例(49例はメラノーマ)の患者が用量漸増臨床試験に参加し、延長相試験にはV600E BRAF変異をもつ転移性メラノーマ患者32例が追加された。グレード2度あるいは3の発疹、疲労、関節痛による用量制限によって、第2相試験の推奨用量を960mgを1日2回とした。用量漸増コホートでは、V600E BRAF変異をもち、PLX4032 240mg以上を1日2回投与したメラノーマ患者16例中10例が部分寛解、1例が完全寛解を示した。延長コホートの32例では、24例が部分寛解、2例が完全寛解を示した。全例で推定無増悪生存期間の中央値は7ヶ月以上だった。

結論:V600E BRAF変異を有する転移性メラノーマ患者に対するPLX4032治療は、大部分の患者で腫瘍の完全あるいは部分的退縮が認められた。(Plexxikon 社とRoche Pharmaceuticals社から資金を受けた。)


転移性メラノーマは難治性で、現在はDacarbazineなどが治療に用いられていますが、あまり有効ではありません。

がん細胞におけるマップ・キナーゼ経路における変異を網羅的に調べたところ、メラノーマの40から60%(がん全体では7から8%)において、BRAFというマップキナーゼ・キナーゼ・キナーゼに変異があることがわかりました。また、BRAF変異の90%は、600番目のアミノ酸であるバリン(V)がグルタミン酸(E)に変化しています。これをV600E変異とよびます。

このV600E変異によってBRAFのタンパク質リン酸化活性は常に活性化された状態になります(構成的活性型とか恒常的活性型とよぶ)。その結果、BRAFの下流のマップ・キナーゼ経路も常に活性化状態になり、細胞増殖が止まらなくなります。

PLX4032は、これまでの実験的研究で、V600E変異BRAFキナーゼ活性を低濃度で阻害し、下流のマップ・キナーゼ経路を遮断し、V600E変異BRAFをもつ細胞の増殖をブロックすることが知られていました。さらに、ヒトメラノーマを移植したヌードマウスにPLX4032を経口投与して、腫瘍の退縮も確認されていました。

PLX4032の副作用としては、論文中にある発疹、疲労、関節痛が主なもののようです。関連記事にも書かれていますが、BRAF変異がない場合はBRAF阻害薬がマップ・キナーゼ経路を活性化することが知られており、これが副作用の原因かもしれないそうです。

また、最初からPLX4032に対して耐性を示すものや治療途中から耐性を示すようになるメラノーマもあるそうですが、これらの耐性を生じるメカニズムはまだ不明だそうです。

下は、余命6ヶ月から1年と言われてPLX4032で救われた患者を紹介するニュースの動画です

New Hope for Melanoma Patients

同じ研究を報道した日本語の記事もありました。
特定の悪性黒色腫を80%縮小、米研究

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