海馬歯状回の神経細胞新生を増強し、老化マウスの学習を改善する化合物P7C3の発見

Discovery of a Proneurogenic, Neuroprotective Chemical

以下は、論文の要約です。


成体マウスの海馬において神経細胞新生を増強することができる化合物のin vivoスクリーニングを行った。

調べた1000の低分子化合物の中8個が海馬歯状回の顆粒細胞下層(subgranular zone (SGZ))における神経細胞形成を増強した。これらの中で、P7C3と名づけられたアミノプロピルカルバゾール化合物は、目的に適った薬理学的特性を持っていた。

生体における実験で、P7C3は新生神経細胞をアポトーシスから守ることで新生細胞数を増やすことが示された。

神経PASドメイン3タンパク質(NPAS3)をノックアウトしたマウスは、海馬での神経新生が障害され、歯状回の神経細胞異常(奇形)と電気生理学的機能異常を示す。

このNPAS3ノックアウトマウスにP7C3を長期投与すると、新生海馬神経細胞のアポトーシスが正常化し、ノックアウトマウスの異常が改善された。

P7C3を老化ラットに長期投与すると、マウスと同様に歯状回での神経細胞新生が増強し、細胞死が抑制された。さらに、老化による認知能力の低下も回復した。


海馬歯状回の顆粒細胞下層(subgranular zone (SGZ))には神経幹細胞(neural stem cell)が存在することが知られています。この実験では、脳室内に化合物ライブラリーを投与して、歯状回の神経細胞の増殖を調べるというスクリーニングが行われ、P7C3(pool #7, compound #3)という興味深い化合物が単離されました。

P7C3は、海馬歯状回で増殖する(BrdUを取り込む)細胞を70-80%増やします。この作用は、脳室内投与だけでなく、静注、腹腔内投与、経口などあらゆる投与法でみられます。経口でのバイオアベイラビリティーは32%、マウスの場合5mg/kgの投与で最大の効果が得られるそうです。

新生神経細胞のアポトーシスを抑制するメカニズムとしては、ミトコンドリアの膜統合性(membrane integrity)の保護作用が示唆されています。ただ、なぜ海馬歯状回の神経細胞に特異的に働くのかはまったく不明です。

Dimebonなど他の薬物との比較もされていて、P7C3が優れていることが示されています。Dimebonは最近の臨床試験では、アルツハイマー病への有効性が示されませんでしたが、P7C3はより強力な神経細胞新生作用が示されているので、臨床的に有効かどうかが注目されます。

スクリーニングに用いられたマウスとP7C3の構造式

P7C3で新生神経細胞が増えた様子(黒い細胞がBrdUを取り込んでいる)

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