EGFR変異を伴う進行性肺小細胞がんに対するゲフィチニブ(イレッサ)と従来化学療法の比較

肺がん治療薬イレッサ、女性に高い効果 臨床試験で判明

以下は、記事の抜粋です。


肺がんの治療薬「イレッサ」を使った治療法が、特定のタイプの患者に対して、従来の抗がん剤治療に比べ大きく効果があることが、東北大など国内約50施設で行われた臨床試験でわかった。このタイプは日本人に多く、とくに女性患者に多い。遺伝子診断で対象者を事前に絞れるため、患者はより効果の高い治療を受けられるようになりそうだ。

イレッサは2002年に、世界に先駆けて日本で初めて承認された。アジア人、とくに喫煙との関連が低い女性の肺腺がん患者によく効くと指摘される一方で、承認直後は副作用の間質性肺炎による死亡者が相次ぎ、社会問題となっていた。

イレッサは、がんの増殖にかかわるEGFRと呼ばれる遺伝子に変異がある進行がん患者に効果があると考えられていた。研究班は、この遺伝子に変異がある進行性の肺がん患者230人を、最初からイレッサだけを使う患者と、従来の化学療法を受ける患者に分けた。腫瘍が大きくならずに安定している期間を比べると、イレッサを使った患者は平均10.8カ月間、化学療法の患者は5.4カ月間で、大きく差が出た。生存期間はそれぞれ30.5カ月、23.6カ月だったが、患者数が少なく、統計的に有意な差は出なかった。

日本人の肺がん患者は、約3割にEGFR変異があり、50歳以下の女性に限ると半数以上にのぼる。ただ、日本肺癌学会が05年に作成した指針では、イレッサを治療の最初から使うことは推奨されておらず、現在改定を進めているところだ。

イレッサは重い副作用で死亡することがあるため、その使い方が課題となってきた。今回の結果を受け、遺伝子診断を徹底して対象者を絞りこむことで、効率的に使えるようになる可能性がある。6月24日付のNew England Journal of Medicine電子版で論文を発表する。


元論文のタイトルは、”Gefitinib or Chemotherapy for Non–Small-Cell Lung Cancer with Mutated EGFR”です(論文の要約をみる)。

非小細胞肺がんで上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor (EGFR))に変異があるものは、ゲフィチニブ(gefitinib、商品名:イレッサ)のようなEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に良く反応しするとされていますが、有効性や安全性について従来の化学療法と比較した臨床研究はありませんでした。

対象の230名はすべて転移がある肺がん患者です。従来の化学療法とは、カルボプラチン(パラプラチン)とパクリタキセル(タキソール)の併用療法です。一次エンドポイントは、腫瘍が大きくならずに安定している期間(progression-free survival)、二次エンドポイントは、生存期間(overall survival)、反応率(response rate)と毒性(toxic effects)です。

記事に書いていない結果では、反応率もゲフィチニブ群73.7%、従来化学療法群30.7%で有意差がありました。ゲフィチニブ群で最も頻度の高い有害事象は、発疹(71.1%) 、ALT上昇(55.3%)、化学療法群では、好中球減少(77.0%)、貧血(64.6%)、食欲喪失(56.6%)、感覚神経障害(54.9%)でした。ゲフィチニブ投与を受けた1名の患者が間質性肺疾患により死亡しました。

論文は、EGFR変異によって選ばれた進行性非小細胞肺がん患者については、最初の治療としてゲフィチニブを投与することで、従来の化学療法と比べて、腫瘍が大きくならずに安定している期間が長く、毒性も認容範囲内であると結論しています。

ところで、上の朝日新聞の記事は、ゲフィチニブは生存期間を有意に延長しなかったと、論文に忠実に書いていますが、以下の毎日、47news、日経など他社の記事はすべて「生存期間2倍に」と誤った記事を書いています。

イレッサ:遺伝子変異の肺がん患者に使用、生存期間2倍に

イレッサで生存期間2倍に 肺がん治療、指針見直しへ

この誤った記事の理由は、亀田総合病院 感染症科のブログに書かれているように、朝日以外の記者は、東北大のプレスリリースだけをネタに記事を書いたためだろうと思われます。

結果を誇張してプレスリリースする大学と元論文を読まない科学記者の共同作業によって、ゲフィチニブ(イレッサ)についての誤った知識が広められました。

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